QFHアンテナの製作

(最終更新 2021.12.11)

 気象衛星NOAAの受信用アンテナということで、当初は簡易的に専用の垂直ダイポールアンテナや145/432MHZ グランドプレーンを使用して受信していました。

 受信していますと、よりきれいに受信したいと思うのが人情でしょうか。そのためにはちゃんとした受信アンテナ が欠かせません。そこで、一体どのような偏波方式で電波が送信されているか調べると「右旋回偏波(CW: clockwise)」 になっていました。そのようなことから受信するアンテナは円偏波アンテナ(ターンスタイル、QFH型等)の 使用が望ましいことが判りました。

 気象衛星受信用のQFHアンテナはナガラ電子発売されているようですが、結構なお値段でお遊び程度で受信する のに購入するのはもったいないと思い、お得意の自作することにました。QFHアンテナの自作に関するデータを 探しましたところ、下記のイギリスのアマチュア局による製作記事が見つかりました。

QFHアンテナ自作に関するホームページ
Bill Sykes G2HCG and Bob Cobey G0HPOホームページ

 この局が作ったものは、エレメントに8mmの銅パイプを使用した本格的なものです。そこまで本格的な ものは必要ないと考え、簡単に入手可能な屋内配線に使用される2.6mmのVA電線の被覆を剥いで代用しました。

 原典よりエレメント直径が約1/3ほど小さいため、エレメント長さの調整が必要ではと考えましたが、 計算方法等が分かりませんので原典の寸法で作ったところ、結果は共振周波数が550KHZほど高くなっていました。

 この状態でも145/432MHZ用のグランドプレーンで受信するよりきれいに画像受信ができていました。ところが 最近コン柱上のアンテナ設備撤去に伴い、このQFHアンテナの移設が必要になりました。

 せっかくQFHアンテナを下すなら改造をしたいと考え、QFHアンテナの自作で検索したところ下記のような ホームページが見つかりました。


 ★ QFHアンテナ自作のおすすめのホームページ


   新ハイブリット無線室のホームページ ※イギリスのアマチュア局(G2HCG G0HPO)と同じ方法で自作

   気象衛星NOAA用 受信アンテナの製作のホームページ ※エレメント長さを計算できるソフトを使用して自作




計算ソフトを使用して再設計


 上記のおすすめのホームページの下段の計算ソフトを使用した方のホームページを参考に早速計算させてみました。現在使用中のQFHアンテナの縦横比を計算してみると0.67になっていました。この方のアンテナ計算ソフトに関する説明では、縦横比を小さく設定(※0.3〜0.4)すると低仰角時のゲインが上がるとなっています。

 そういえば仰角が低い位置では、144/432MHZグランドプレーンアンテナを使用した方が信号が強く入感していました。そういう意味では現用品の0.67は、低仰角向きではないと思われます。

 販売されているメーカー製のQFHアンテナも、写真で見ると縦長の恰好をしています。多分縦横比0.44くらいの比率で設計されていると思われます。ということで、せっかく計算をしましたので、縦横比0,32に改造してみることにしました。


 QFHアンテナの計算ソフトは下記のサイトにあります。

  http://www.jcoppens.com/ant/qfh/calc.en.php/


 このソフトで計算させる場合は、設計周波数を含め、6つのデータを入力する必要がありそうです。この6つのデータを入力後計算ボタンをクリックすると、アンテナ制作に必要な各データが出力されるようです。

 ちょっと計算させてみました。入力が必要な6項目は下記のデータを入力しました。

   @Design freqency(設計周波数)=137.5MHZ
   ANumber of turns(twist)(下部エレメントを何回捻るか。通常は0.5回転)=0.5回
   BLength of one turn(何波長で作るか。通常は1波長)=1波長
   CBending radius(曲がり個所の直径)=2mm (※エレメントが直角に曲がる箇所の回転半径、エレメント総長に反映される)
   DConducter diameter(エレメント直径)=2.6mm
   EWidth/height ratio(エレメント縦横比。デフォルト値は0.44) =0.32 (※数値が小さい方が低仰角時のゲインが大きくなる)


 計算結果は下記のようになりました。せっかくの機会ですので、今回のQFHアンテナの制作過程の詳細を順に写真でご紹介します。下記の写真の中で、プリント基板を使用したエレメント基台を作っていますが、プリント基板の入手が困難な方や、この部分を作るのが面倒だとお思いの方は、作らずに済ませても問題ないと思います。

 基台を作らない場合は突合端子を取り付けた2個のL字型電線に同軸ケーブルの芯線と網線をそれぞれハンダ付けし、両電極が短絡しないように適当な絶縁物を間に入れ、全体の形を整えてホットボンドで固めてしまう方法でもいいと思います。

 また、特に注意する点としては、ラージLまたはスモールLのエレメントを下部で塩ビパイプを貫通させた後、90度上に曲げ、そのエレメントの先端を、L型電線の突合端子に接続する際は、下から見上げて180度左方向に回転した突合端子に接続させることです。

 これを逆回転方向に接続すると、円偏波の回転方法が逆になり、所定の性能が得られないことになります。私の書いているスケッチ図や、ほかの方のホームページで予め捻じれる方向を確認され、間違わないようにしてください。


     
※各画像上をクリックすると拡大して見ることができます。
6つのデータを入力後計算ボタンを
クリックすると計算結果が得られる
ラージLの計算結果 
エレメント長さ ほかの計算結果
スモールLの計算結果
エレメント長さ ほかの計算結果
平面図面化するとこんな感じ
底辺は右に180度捻じった形になる
計算結果のデータをスケッチ図に
反映すると、このようになります
2.6mmの2芯VA電線の外被を
カッターナイフで切り裂く
ラージLは2375.6mmにスモールLは
2257.4mmにそれぞれ切断する
エレメントが直角に曲がる4箇所を
端から順にマーキングする
基台となるプリント基板を切出し
ハンダメッキ等の処理を行う
2.6mmの電線を長さ6cmで切出し
真ん中で90度曲げ加工する
L字の電線端末に突合端子を取付
先に作った基台にハンダ付け
基台に同軸ケーブルを貫通させ
同軸を写真のようにハンダ付け
先端の4か所に切込を入れたパイプ
に基台を入れてホットボンド処理
同軸バラン部分の弛みを締め上げ
ホットボンドで固定する
スモールL電線を786.3mmの位置の
穴に差込み90度上に曲げ加工する
上げた電線を内側に90度曲げ
先端を180度捻った突合端子に差込
ラージLもスモールLと同じように
加工し上部の突合端子に接続
パイプ上部にメクラキャップをかけ
隙間部分をホットボンド処理
スモールL、ラージLとも高さの1/2の
箇所に取付けたFRP棒で支持する
必要箇所をビニールテープ巻きし
エレメントを螺旋状になるように整形
作業終了、前に作ったものに
比べると縦長形状になっている
旧作の縦横比0.67のQFHアンテナ 共振周波数は137.144MHZ
他にも多数の共振点があった??
VA電線は1m当たり394円、
突合端子は1個40円で購入した


 一応出来上がりましたが、共振周波数を測定した際にたくさんの共振点(※ディップ箇所)が見受けられました。共振周波数として記載している137.144MHZが果たして正しいのか自信がありません。ちなみに、たくさんの共振点の中に145.053MHZがありましたので、実際に145MHZのFM波を乗せてみました。

 結果はSWRが1.5で145MHZのアンテナとしても問題なく使えそうな感じでした。ということで、早速ローカル局に電話をかけて呼び出して145MHZで実際にコンタクトしてみました。結果は通常使うには全く問題なく使用できました。

 気象衛星受信の方は実際にNOAAの信号を受信してみましたが、こちらの方も受信画像を見た限りではそこそこの画像が得られましたので、とりあえず完成ということにします。しばらくこのまま使用し、何らかの不都合があった時点で、今度は縦横比0.44に再改造するかもしれません。




145MHZ、432MHZ用のQFHアンテナ(おまけ)


 このQFHアンテナに関して、QRP仲間のJA6DWO局が145MHZ帯で使えるものが作りたという話をしていました。話を聞いた時点では今回の計算ソフトを知りませんでしたので、出来ないことはないと思うがエレメント長さの算定方法が分からないねという話で終わっていました。今回計算ソフトが見つかりましたので、ついでに145MHZ用と435MHZを計算をさせてみました。

 結果は下記のようになりました。これは計算ソフトを使用してエレメント長さを出しましたので、オマケで電波を乗せた時と違い、多分問題なく使用できると思います。144MHZや432MHZ用のメーカー製のアンテナは、値段が高いため、それに比べて安価に出来るこのQFHアンテナを、下記のデータで自作されたらいかがでしょうか。ただしこの144MHZ用や432MHZ用は、私が実際に作ったわけではなく、あくまで計算上の話ですので、うまく働くかどうかの保証はありません。

   
※各画像上をクリックすると拡大して見ることができます。
145MHZ用のQFHアンテナ
縦横比0.32で計算させた
145MHZ用のQFHアンテナ
ラージLの計算結果
145MHZ用のQFHアンテナ
スモールLの計算結果
145MHZ用を平面図面化するとこんな
感じ、底辺は180度捻じった形になる
145MHZ用の計算結果のデータを
スケッチ図化するとこのようになる
432MHZ用のQFHアンテナ
縦横比0.32で計算させた
432MHZ用のQFHアンテナ
ラージLの計算結果
432MHZ用のQFHアンテナ
スモールLの計算結果
432MHZ用を平面図面化するとこんな
感じ、底辺は180度捻じった形になる
432MHZ用の計算結果のデータを
スケッチ図化するとこのようになる
今回作ったQFHアンテナを使用して
受信した気象衛星NOAAの画像
受信機はRTL-SDR.COM V3を使用
FMの受信帯域は48KHZに設定



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