(1998年)6月中旬にアマチュア無線の大先輩(JA6DF永安OM)から電話がかかってきました。「おい内村、アンテナを下ろしてくれ」永安OMの口調はいつもこの調子です。
事情を聞いてみますと、家の後ろ半分を取り壊すとのことで、アンテナ用のパンザーマストも一緒に倒す予定とのことでした。そこでパンザー柱にセッティングしているアンテナ(1200MHZYAGI他)とローテーター類を外してほしいとのことでした。
久しぶりにお声を聞きましたので、お年を尋ねましたところ70歳になるとのことでした。ご自分で撤去できないため困って依頼をされたようです。若い頃に随分と可愛がっていただきましたし、ほかならぬ大先輩からのご依頼です。梅雨の合間をぬってアンテナ他の撤去作業をしました。
作業が終わってふと気が付いたんですが、いかにも古めかしい雑誌が紐で縛って玄関先に置いてありました。聞きますと捨ててしまうとのことでした。
ちょっと見てみますと昭和23〜26年頃の「ラジオ技術」という雑誌でした。パラパラとめくると、ST管使用のラジオの回路図などがあちこちに載っています。いやー懐かしい。
てな訳で、帰りに20冊ほどもらって帰りました。せっかくいただいた約50年前の古い本です。このまま闇に葬ってしまうのはもったいないと考え、ホームページでその一部を紹介することにしました。
下の雑誌の表紙は、昭和23年12月28日発行の「ラジオ技術(株式会社科学社出版)」1949年1月号をコピーしたものです。
当時この雑誌に掲載されていた広告のページをコピーしてみました。わたしもそれほど詳しくはないんですが、現在の無線機メーカー「ケンウッド」の前身が「トリオ」でそのまた前身が「春日無線」だったと聞いています。
「当時の広告NO1」の中の左側の上から2番目がその広告欄になります。社名が「春日無線電機有限会社」となっていますので、昭和23年当時はまだ有限会社だったんですね!
現在「ケンウッド」といえば、「ヤエス」「アイコム」とともに、アマチュア無線の世界では、全世界にその名を轟かしている、無線機メーカーの御三家ともいえる超有名メーカーになっていますね。
そのほか現在も秋葉原に店舗があると思われる、「廣瀬無線」「角田無線」「桜井無線」「三櫻電気」などの広告もあるようです。(※現存のお店と関係ないかもしれません)
上の地図は昭和25年頃の秋葉原(神田)付近の地図です。記事の内容からして、この時代に「ラジオデパート」や「万世橋ラジオガーデン」などが開店したようです。地図上のラジオデパートの右上に、「ラジオセンター(予定地)」とあるのが興味深いですね。
この雑誌に掲載されていた製作記事は、ST管を使用した5球スーパーラジオの組立記事が多いですね。終戦後のラジオの需要増に対しメーカー側の量産体制が追いつかず、安く作れる自作がもてはやされた時代背景がありそうです。
記事の中に「まもなく民放が放送を開始する」という記述もありますし、昭和23年頃は終戦間もない時期ですので、これといった娯楽もなくラジオを聞くことが唯一の楽しみであったかもしれません。そういえば先輩から、若い頃5球スーパーを作るアルバイトをして、小使い銭を稼いでいたと聞いたことありました。
雑誌をパラパラとめくっていましたら、ST管使用の5球スーパーラジオキットの価格表が見つかりました。キット価格合計が3.304円になっていますが、さてこの金額、現在のどれくらいになるんでしょうか?
めずらしい記事
雑誌を朝夕の通勤列車の中で読んでいましたら、面白そうな記事が見つかりました。
最初のものは水晶を磨いて固有周波数を変更する方法です。OMさんから、昔は水晶を研磨して周波数を変更していたと聞いたことはありますが、このような具体的記事を見るのは初めてです。
次のものは、テレビの試験放送が始まる約1年前に考えられたイメージ映像です。(※注 イメージ映像は昭和24年1月号に掲載されたもの、NHKのテレビ試験電波は昭和25年3月21〜29日の間に発射された)イメージ映像は、駅弁売りのおじさんが弁当の代わりにポータブルテレビを売っているというもので ”旅のつれづれに小型テレビはいかがでしょう” という解説がついています。
タイトルも「夢にあらずビデオ時代来る」となっており、当時の編集者が急速なテレビジョンの普及を予測し、今にこのような時代が訪れることを夢見て(予想して)作り上げたイメージ映像と思われます。
この編集者の予想は見事に的中し、今や各家庭にテレビが2〜3台あるのは普通になりましたし、またポータブルテレビについても、カラーTFTのポケットテレビが簡単に手に入る時代になっています。約50年後の今日の状況を見事に予想した、優れた作品といえるのではないでしょうか。
最後は「真空管のできあがるまで」というタイトルで紹介されていたもので、今後このような記事にお目にかかる機会はまずないと思います。(※原稿が見事に変色していますので、かなり見苦しいです)