前作のNO4号機は、フイルターにメーカー製の9MHZのものを使用したため、局発MIX回路等が必要となり回路が複雑になっていました。そこで15MHZのラダータイプフィルターを自作し、6MHZのPLL局発が直接使えるように変更したのがこの5号機です。これにより前作のNO4号機に比べ、回路が大幅に簡素化されています。私が自作機の中で一番気に入っているのがこのNO5号機です。なおこのリグは1993年9月に完成しました
正面操作パネル配置(ダイアル、各ボリューム関係配置の説明)
上の写真はNO5号機を正面から撮ったものです。左側にSメーター、真ん中の上部が周波数のディジタル表示器、左下のツマミが音量調整用ボリュームです。右下のツマミは、1KHZ以下の周波数調整用(±500HZ可変可)で、更にこのツマミを手前に引くと、アンテナ線が直接SSBジェネレータの入力に接続され、15MHZの標準電波を受信することができます。
右端の大きなツマミがメインの周波数可変用ダイアルで、1ステップ1KHZの周波数のアップダウンができます。ケースの大きさは横幅15cm×高さ5cm×奥行き20cmで、鈴蘭堂のFM50という市販品を使用しています。
上面基板配置(上面に配置している基板関係の説明)
できるだけ小さく組み上げるということで、構造的にはサンドイッチ構造にしています。具体的には、ケースの中に上下を仕切るためのアルミ板を入れ、上面側にSSBジェネレーター、トランスバーター、終段パワーアンプを、また下面側にPLL回路とそれを制御するディジタル回路をそれぞれ取り付けています。上の写真は、仕切り板の上側を撮ったものです。左上がSSBジェネレーター基板です。フイルターは15MHZの水晶8個(1個100円、池田電子で購入)を使用しラダータイプで組んでいます。
上右部分がトランスバーター部分で15MHZの信号を21MHZに変換します。もちろんこの部分は送受信兼用です。下の細長い部分が終段パワーアンプ部です。最終段のトランジスタは2SC1957を使用し、最大出力は3Wです。
下面基板配置(下面に配置している基板関係の説明)
上の写真は仕切り板の下側を撮ったもので、右上がPLL発振回路基板、その右下の小さな基板はダイアルエンコーダー基板、左下にはPLL回路を制御するアップダウン回路の基板を配置しています。PLL回路では60MHZ台(10KHZステップ)を発振させ、分周ICで1/10に分周して6MHZ台(1KHZステップ)を作ります。この6MHZ台の局発出力とIFの15MHZとをミックスして21MHZを得ています。
可変できる周波数は、21.000MHZから21.899MHZの899KHZです。またIKHZ以下の調整は、PLLの基準発振用水晶をVXOして±500HZの可変ができるようにしています。
ここで紹介したNO5号機は、下記のような諸特性になっています。送受信時の電流値以外の諸特性については、菊地OM(JA1HWO)に測定していただきました。
* 受信時電流 225mA (※無音時の電流値) * 送信時ピーク電流 795mA (※出力3W時の電流値) * 出力第2高調波 -52dB (※規定値-40dB以下) * 出力第3高調波 -60dB 以下 (※規定値-40dB以下) * キャリアサプレッション -48dB (※21.45MHZでは-52dB) * スプリアス(VFO×3) -66dB (※VFO×4は-65dB) * 送信出力 3W (※21.45MHZでは2.8W) * 15MHZフイルター特性 -6dB BW 2.2KHZ -60dB BW 4.1KHZ ※上記の測定値はいづれも電源電圧13.0V時の値です。
今までの説明でNO5号機の概要説明は終わりですが、もっと詳しい内容が見てみたい人のために、各回路図やプリントパターン図を下記でご紹介します。興味がおありの方はどうぞご覧下さい。
スプリアス測定
使用した測定器類とその測定風景
左の写真はNO5号機のスプリアス特性を測定しているところです。 2トーンジェネレーターのシングルトーンをマイク入力に接続し、フルパワー(3W)時のスプリアスを測定してみました。
せっかく機会ですので、最終出力だけではなく、次項の4つのポイントの測定をしてみました。
尚、測定時に使用したスペクトラムアナライザーは、TAKEDA RIKEN のTR4110(TRACKING SCOPE)+4111A(RF SECTION) です。
測定を実施したポイント
測定を行ったポイントは、終段トランジスタのコレクタ出力から、順を追って測定してみました。
具体的な測定ポイントは左図に記載している4箇所です。
測定ポイント1(終段トランジスターの直後)
左の写真は終段トランジスターのコレクター出力直後のものです。
当然のことながら、フイルター類が全く入ってない状態でのスプリアスです。
驚いたことに2倍波(42MHZ)と3倍波(63MHZ)は、ほぼ基本波と同じレベルでした。
つまり高調波の42MHZや63MHZも基本波と同じレベルの出力が出ていることになります !
ここにアンテナを直接接続すると、たくさんの目的外電波が発射され、結果として色々な方面にご迷惑をおかけすることになります。
測定ポイント2(T型フイルター直後)
左の写真はT型フイルター直後のスプリアスです。
フイルターなしに比べると、さすがに高調波のレベルが下がっています。しかしながら2倍波のレベルは基本波に対し−30dBです。電波法でいうところの−40dB以下はクリアーしていません。
T型フイルターのQLを高くとる設計方法もありますが、そうすると通過ロスが大きくなったり、帯域が狭くなるなどの不都合が生じます。そのへんを考慮すると、広帯域アンプにT型フイルター1段だけでは無理なことがわかります。
測定ポイント3(ローパスフイルター1段の直後)
左の写真はT型フイルターの後に、ローパスフィルターが1段入った後でのスプリアス発生状況です。
ローパスフイルターが1段入っただけですが、2倍波のレベルが−45dBまで下がっています。
この状態ですと、電波法でいうところの−40dB以下はクリアーしています。
クリアーしているとはいうものの、わずか−5dBですので、ここではもう一段入れた方が安心できますね。
測定ポイント4(最終出力でのスプリアス)
左の写真は最終出力でのスプリアス発生状況です。
スプリアスの最大値は2倍波の−55dBです。
3倍波は−62dB、4倍波は−60dBと全く問題ない値になっています。
ローパスフイルターを一段追加しても、わずかな錫メッキ線と、コンデンサー2個しか必要ありません。フイルターだけはケチらず多めに入れた方が、やはり安心できますね。
局発のスプリアス特性と、終段パワーアンプ出力の2トーン波形
せっかく測定を思いたちましたので、ついでに局発のスプリアス特性と、終段パワーアンプの最終出力(前項の測定ポイント4)での2トーン波形を観測してみました。
特に局発の2倍波(12MHZ)は、IFを15MHZにしている関係上、できるだけ低いレベルにする必要があります。この2倍波のレベルが大きいと、15MHZ+12MHZ=27MHZで、旧CB無線の27MHZ帯をもろに受信することになります。(当局のロケーションは、国道から直線距離で250m程度のしか離れておらず、CB無線の影響を受けやすい位置関係にあります)
旧CB無線も一時の賑わいは無くなりましたが、全く絶滅ということではなく、ワッチしてみますと、相変わらずスタンバイ時の「ピューピュー」という口笛音が飛び交っています。
測定結果は、多段フイルターの効果が出て、局発最終出力段での2倍波(12MHZ)は、基本波(6MHZ)に対し−55dBになっています。今のところ27MHZ帯のシグナルが混信したことがありませんので、この高調波(12MHZ)による悪影響は出ていないようです。
局発スプリアス測定ポイント
局発のスプリアス発生状況と終段出力での2トーン波形 (それぞれの写真上をクリックすると、拡大写真を見ることができます)
測定ポイント1 測定ポイント2 測定ポイント3 メインキャリア拡大 2トーン波形観測風景 2トーン波形
NO5号機を使用したコンタクト動画 ※このトランシーバーを使用したコンタクト動画をYouTubeにアップしています。
NO5号機を使用したコンタクト動画2 ※このトランシーバーを使用してコンテストに参戦。外国局とコンタクト成立!