HF帯SSBトランシーバーの自作も、1988年の1号機自作に始まり、改良につぐ改良の繰り返しで、とうとう6台目になってしまいました。作る時はいつもこれが最良と思って作ってはいるんですが、出来上がってみますと、どうもこの部分がと気になる箇所が出てきます。そこでやめとけばいいんですが、根が凝り性でこれが災いしてか、気がつくと改良版の制作をしてしまいます。
今改めて振り返ってみると、21MHZのトランシーバーばかり性懲りもなく作ってしまったものだと自分でも呆れています。
QRP運用では50MHZや28MHZもあるんですが、いずれも夏場のEスポシーズン以外ではコンタクト相手が見つかりそうにありません。
また50MHZは、当地区にはTVの2CHの放送波があり、悪いことに弱電界地域になっています。そのようなことから、無線機が電波法上のスプリアスー60dbをクリアーしていてもTVIが発生します。そのような訳で50MHZも興味はあるんですが自作はしていません。
話が横道に大きくそれましたが、本題の6号機の概要について説明をします。NO6号機は前作の5号機に比べ、大まかに次のような改良をしています。
SSBジェネレーター回路
SSBジェネレーターの変復調にNE612Aを使用した。
NE612Aの消費電流は、電源電圧6Vでわずか2.5mAです。NO5号機で使用したSN76514の約20mAと比較すると、ビックリするほど低消費電流です。
また、入力可能周波数は500MHZと抜群のすばらしさです。ちなみに、局発側の入力可能周波数も200MHZまでOKです。
こんな優秀なICを使わない手はありません。500MHZまで使えるところを、たかだか15MHZ位で使用したためか、キャリアバランス調整回路を入れなくても、十分なキャリアサプレッションが得られるようです。
USBとLSBどちらも出せるようにした。
トランスバーターを使用し他のバンドで運用する場合、ヘテロダインの関係でLSBが必要になる場合があります。
このNO6号機では、キャリア発振用の水晶を2個準備し、スイッチで切り替えUSB、LSBのどちらも出せるようにしています。なお、USB時のキャリアポイント周波数は15.000MHZ、またLSB時は15.0027MHZに設定しています。
トランスバーター回路
トランスバーターのミキサーにもNE612Aを採用した。
1〜5号機までのトランスバーターミキサーには、すべてダイオードミキサーを使用していました。
ダイオードミキサーは、トランジスターやFETを使用したアクティブタイプミキサーに比べ、直線性が非常に良くひずみが少ない、ミキシングノイズが少ないなど、優れた特性を持っています。
欠点としては、局発(L0)入力が10mW程度必要なことと、あえて言うならば変換ゲインがマイナスであることでしょうか。
受信系統の総合ゲインアップを考え、この6号機ではトランスバーターのミキサーにもNE612Aを使用してみました。
具体的なゲインアップは、ダイオードタイプミクサーと比較し、NE612Aの変換ゲインが+14db、ダイオードミクサーの変換ゲインが−6db、これらを総合的に考えると、約20dbのゲインアップになります。
実際に受信してみると、Sメータの振れなどから、明らかなゲインアップが実感できます。混変調面がどうなったかは確認していませんが、SN面での劣化はあまり感じませんでした。
AGCを高周波増幅段にもかけるようにした。
受信系統の総合ゲインアップに伴い、強力な信号はIF段だけのAGCでは絞りきれなくなりました。その対策として、高周波増幅段にもAGCをかけるように回路変更をしています。
トランスバーター内の局発ストレートアンプを無くした。
NE612の局発入力は、ダイオードミキサーに比べパワーが必要ありません。そのようなことから、従来のリグに入れていた局発ストレートアンプが不必要になりました。
ストレートアンプの分だけ部品点数が減り、結果として回路の簡素化が図れました。消費電流的には、ストレートアンプ部分の消費電流は0になりましたが、NE612Aの消費電流がプラスされましたので、±変化なしといったところでしょうか。
PLL回路
PLL回路の1/10分周ICをμPB552に変更した。
PLL回路内で60MHZ台の局発を1/10にする分周IC、HD10551は結構大飯ぐらいで約60mAくらいの電流が流れます。
今回は総合の低消費電流化を考えましたので、この分周ICにも目をつけ、同じ動作をし消費電流が格段に少ない、μPB552を採用しています。
μPB552の消費電流は、電源電圧6V時にわずか6mAです!HD10551と比較すると1/10の低消費電流です。
アップダウン回路
ダイアル回路とアップダウン回路を一枚の基板にした。
NO5号機では、ダイアルエンコーダー回路基板と、アップダウンカウンター回路基板をそれぞれ別に作っていました。この両基板は別々に作る必要はなく、6号機ではこの2枚の基板を一枚に合併しました。
最初はNANDでフリップフロップ回路を構成し、総合的に2個のICの減少を目指しましたが、カウントミスが時々発生しましたので、現在の回路に変更してしまいました。
現在の回路ではNAND2個とフリップフロップ1/2個が遊んでいますので、もったいないとは思いますが、安定動作のためには仕方ないと諦めています。最終的に両基板の合併でトータル1個のICの減少にとどまりました。
終段パワーアンプ回路は、とりあえずNO5号機と同じ回路で作っていますが、回路的にはプッシュプル回路のパワーアンプにも興味があります。プッシュプル回路で作るか、はたまた、シングルタイプのMAX100mW程度のパワーアンプにしようかと、構想があちこちに飛んでいます。
終段パワーアンプ回路
旅行計画を練っているようなもので、終わってしまうと何ということはないんでしょうが、ああしようとか、こうしようとか、勝手に構想を巡らすのも自作ならではの醍醐味といえます。
このNO6号機は下の写真のようなバラック状態のままで作業が止まっています。作業が止まった理由は、ここまで作り上げたところでパソコンにのめり込み始めたからです。
現在のNO6号機
ここでも凝り性な性格が災いし(?)、パソコンの環境整備をしたり、インターネットに接続するための準備をしたりなどで、すっかりパソコンの泥沼にはまってしまいました。
ただし、この6号機は未完成とはいいうものの、残っている作業はケースに収納するだけです。今回の改良の最大目標であった低消費電流化も、大体予想していた結果になっています。この辺については、消費電流、キャリアサプレッション、スプリアスの発生値などを含めて5号機との対比表を作る予定にしています。
また、局発をDDSに変更してみようかとも考えており、秋月電子からDDSキットを既に購入しています。これについてはキットのまま組みたてても、無線機用としては使いずらい物になりそうですので、制御回路を別に作る予定にしています。
そのような訳で、NO6号機が最終的にどのような形で完成するか判りませんが、とりあえず現状でも無線機としてちゃんと働作しますので、現在進行形の形で紹介させていただきました。
2トーン波形を観測中
上面基板配置状況 下面基板配置状況