中学生が作ったSSBトランシーバー

中学生が作ったSSBトランシーバー

(最終更新 1998.04.12)

 事の始まりは、約2年位前にローカルの自作仲間JA6DWO局(花村氏)が、知り合いの奥さんから、中学生の息子の無線開局について相談を受けたことに始まります。

 相談を受けたDWO局が当局の自宅に電話をかけてきまして、本人が開局するための無線設備は準備するが、それとは別に無線機を自作させようかと考えている。どうだろうかということでした。更に詳しく話を聞いてみますと、「発明クラブ」という団体に所属しており、キットのラジオなどを作った経験があるとのことでした。

 年齢を聞いてみますと中学1年生ということで、それなら何とかなるだろうという結論になり、勉強かたがた21MHZのSSBトランシーバーを自作させてみることにしました。

 SSBジェネレーターとトランスバータ、終段パワーアンプの各基板を当局が、またアップダウン回路とPLL回路基板をDWO局がそれぞれ受け持ち、プリント基板のみ私たちが作成し本人に渡しました。コイルの手巻き(FCZコイルは使用せずすべて手巻き)や結線、基板の部品取り付けについては、当の中学生本人にすべて任せました。

 費用は中学生の手持ちの範囲内ということで1万円以内と決め、どうしても購入しなければ揃わない部品(主にIC類とケース)以外は、ラジカセやTVビデオなどから本人に部品を外させ、その部品を流用するという方法をとりました。

 学業がおろそかにならないよう十分時間的余裕を取り、当時中学一年生だった三瀦 忠典(みつま ただのり)君は約4ヶ月がかりでSSBトランシーバーを完成させました。



 自作トランシーバーが完成し満足顔の三瀦君(JP6TQE局) 


顔写真 JPG 4kb  左の写真は自作トランシーバーが完成し、「どうだ!俺が作ったんだゾ」という顔つきをしている、製作者の三瀦君(現JP6TQE局)です。

 何の自作でも同じなんですが、わたしの経験では物が完成しないと後味が悪く、次の制作意欲が湧かなくなります。

 そういう意味で今回トランシーバー作りは、比較的順調に作業が進みあっけなく完成しました。結論を急がずじっくり時間をとって作業を進めたことが、結果的にトラブルが少なく完成を早めたと感じています。

 もちろん、三瀦君が部品取付や結線を慎重に間違いなくしたことはいうまでもないことです。 




 完成した自作トランシーバー(正面写真


正面写真 JPG 4kb 

 左の写真は自作トランシーバを正面から撮影したものです。左下にマイクジャック、その上がSメーター、中央の上が周波数表示のディジタル表示LEDの窓です。

 LED表示の下のツマミが音量調整用のボリューム、これは電源スイッチと連動しています。その右隣のツマミが±500HZ調整用ボリュームです。


 右端のたくさんの穴のあいた部分は、裏側にスピーカーが取りつけられています。この正面スタイルのレイアウトは、当然のことながら三瀦君本人が考えました。

 右上の白っぽいツマミがメインの周波数可変ダイアルです。このツマミを右方向に回すと、周波数が1KHZステップでアップします。もちろんこれを左に回せば逆の周波数ダウン動作をします。


 上面から見た自作トランシーバー 

上面写真 JPG 13kb

 左の写真は上蓋を外した状態です。初心者が組立やすいよう、各基板は平面状に配置されています。平面状に配置することによって、各基板間の結線や各基板ユニットの調整が楽にできると考えたからです。

 全回路を複数の回路基板に分けて作り上げています。具体的には、SSBジェネレーター基板、これは私のNO3号機で使用しているものと同じ回路で、変復調ICにNE612を使用し、15MHZのラダータイプフイルターを使用しています。

 また、SSBジェネレーター以外では、トランスバーター回路、ダイアル回路、アップダウンカウンター回路、PLL回路、終段パワーアンプ回路などがあり、私のNO5号機で使用しているものと同じ回路を使用しています。




 側面から見た自作トランシーバー 


側面写真 JPG 11kb

 

 左の写真と直接関係ないことですが、試験調整段階で若干のトラブルが発生しました。それは、周波数表示用LEDのセグメント不良(bセグメント不点灯)があったことです。ちょうどうまい具合に2桁目の表示固定部分のセグメント不良でした。

 私はLEDの上下を逆にして再使用できると直感しましたが、絶好のジャンク品活用法の勉強と考え、三瀦君にどう対処するか少し考えてもらいました。

 最終的にはちょっとしたアドバイスで、LEDの上下を逆に使用すると、不良のbセグメントの代わりに正常なeセグメントが使用できることに気がつきました。

 

 ほかのLEDに取り替えてもハンダ付けはしなくてはならない。少しの結線変更で再使用できるならそちらの方がベターである。じゃ結線変更をしてもらおうかということになりました。

 LEDドライバーとLEDについては、制作前に詳しい内容説明をしておりましたので理解が早く、三瀦君はさっそくLEDを上下逆にし、結線変更を完了させ問題点は解消しました。

 ジャンク品を多用する自作の世界では、あらゆる面で応用を効かすことが要求されます。今回のトラブルは、結果として応用も含めた知識の幅を広げることに少しは役だったのではと思います。


トランシーバーと一緒に自作したアンテナ

(2elZLスペシャル)
アンテナ写真 JPG 9kb アンテナ写真 JPG 7kb

 上の左の写真は、トランシーバーを作るときに一緒に作らせた2elのZLスペシャルアンテナです。これについても300ΩTVフィダーの寸法取りからハンダ付けや、塩ビパイプの切断組立などすべて本人にやらせました。屋根上への設置は怪我などの大事を考え、この部分だけは私とDWO局で設置しました。

 アンテナ設置後チェックしてみますと、ちょうどBV(台湾)の局が聞こえていました。2EL程度のアンテナですと、下手な作り方をするとフロントもバックも同じ強さで入感することがあります。幸いこのアンテナは、フロントとバックがはっきり区別できましたので、まずまずの出来といったところでした。

※追加情報

 当初は上の左の写真のように、屋根馬を取り付け、それにZLスペシャルアンテナを設置していました。

 雨漏りのため屋根の改修工事をするとのことで、それに伴いコンクリート柱を新たに設置し、4月11日にこのアンテナを移し替える工事を実施しました。

 当日は最近にない暑さでしたが、JA6DWO(花村氏)、JA6MBD(宮崎氏)、JQ6KRT(高橋君)、JQ6KRQ(下川路君)、家主のJP6TQE(三瀦君)、それに当局の6人で移し替え作業をしました。

 上の右の写真は、移し替え工事が完了したアンテナの写真です


情報提供

 実はこの話には続きがあります。三瀦君のトランシーバーが完成した一年後(平成9年)、今度は小学生(6年生)2人にSSBトランシーバーを自作させました。

 この件については、最後まで根気よく面倒を見た、JA6DWO(花村氏)のホームページ上で、ご紹介していただこうと思っています。

 高橋君、下川路君 JPG 17kb

 4月11日の三瀦君のアンテナ工事の手伝いに来た二人のスナップ写真です。当時小学生だった2人も、今は中学生になりすっかり大人びていました。左が高橋君(JQ6KRT)、右が下川路君(JQ6KRQ)です。


ホームページに戻る