RTL-SDR.COM V3を使ったダイレクトサンプリングモード受信

(最終更新 2021.02.17)


 DVB-T+DAB+FM USB チューナーと専用のラジオソフトを使用すると、24MHZ〜1766MHZの広帯域オールモード受信が可能な ことは別のコーナーでご紹介していますが、さらに下図のように復調用IC(RTL2832U)のQ入力(4番ピンと5番ピン)にマッチング トランスを介して、アンテナを接続すると0〜28.8MHZの受信が可能になります。

 このように復調ICに直接アンテナを接続する受信方法は、ダイレクトサンプリングモード受信と呼ばれているようです。 これができるとDVB-T+DAB+FM USB チューナー単体で0〜1766MHZの超広帯域受信が可能になり、受信可能な周波数範囲 拡大され使い勝手がより一層よくなります。

 このダイレクトサンプリングモードによる受信方法については、最初にDVB-T+DAB+FM USB チューナーを購入後、ラジオソフト の導入段階で関連記事を見つけ、そのうち挑戦をと考えていました。とりあえず30MHZ以下の受信については、 100MHZアップコンバータ ーキット(※0〜30MHZの入力信号に局発の100MHZを混合し100MHZ台にアップさせ、DVB-T+DAB+FM USB チューナー の受信可能範囲内にするもの)を購入しましたので、30MHZ以下の受信についてはこのコンバーターを介して受信していました。


DVB-T+DAB+FM USB ダイレクトサンプリングモード受信


 上図はダイレクトサンプリングモードを併用した場合の概念図です。チューナー経由で24〜1766MHZを受け持たせ、24MHZ 以下の周波数をダイレクトサンプリングモードで受け持つ、この両方を使って0〜1766MHZの広範囲な受信が可能になると いうものです。

   (※参考情報 DVB-T+DAB+FM USBチューナーの回路図に興味がおありの方は下記ブログで公開されています)
  閑人さんのブログ (チューナーIC(R820T)と復調用IC(RTL2832U)の回路図を見ることができます)

 ダイレクトサンプリングモードでの受信方法は回路図上では簡単なように見えますが、実際には復調IC RTL2832Uの 4番ピンおよび5番ピンへの引き出し線の半田付けが非常に難しく、何度か挑戦を考えましたが結果的に断念していました。

 昨年末にアマゾンで商品を注文する機会があり、ついでに「DVB-T+DAB+FM USB チューナー」の値段はどうなったかな と思いチェックしてみました。結果は2000円前後で売られていました。わたしがこのデバイスを購入していた2016年ごろは、 半値の1000円以下で購入できていましたので値上がりしているようでした。
 (※2016年当時のDVB-T+DAB+FM USB チューナーの価格)

 チェックしている途中で下記のような商品を見つけました。RTL-SDR.COM V3という名称で販売されているチューナーユニットです。
 RTL-SDR.COM V3のユーザーガイドを見る

 

 28,8MHZのクロックに温度補償値1PPM/初期周波数偏差 2PPMのTCXOが使用されているようです。通常販売されているDVB-T+DAB+FM USB チューナーは、Xtalの偏差や安定度に問題があります。この部分が気になり過去に28.8MHZのXtalを交換した経験があります。

 筐体の下の方にRTL2832U……+HFとあり、この最後の+HFはHFの受信も可能という意味なの?と思い商品説明の詳細を見ると、 ダイレトサンプリングモードでの受信も可能であることが判りました。下図はある販売店の商品説明に使われていたものです。(※商品の 宣伝になると考え勝手に掲載させていただきました)


 


 基板上にマッチングトランスやダイレクトサンプリングモード用LPF等の記載も見受けられます。信号の流れを追ってみると下図の ようになると思われました。アンテナ入力信号は、チューナー方向とダイレクトサンプリング方向へ分配され、ダイレクトサンプリング はLPFを通ってマッチングトランスを介してRTL2832Uの4番5番ピンに信号が流れる。

 このようにRTL-SDR.COM V3はダイレクトサンプリングモード受信に必要なパーツがちゃんと最初から組み込まれているようです。


 


 クロックにTCXOが使われていて、ダイレクトサンプリングモードのパーツが搭載されており 購入当時の値段が2900円でしたので即購入(衝動買い)しました。

 ノーマルのDVB-T+DAB+FM USB チューナーのXtalをTCXOに変更しただけのものが、5000円程度で売られています。さらにダイレクト サンプリングモードにも対応していますのでお買い得と思われます。ただしアマゾンは人気が出た商品は、あっというまに値段が 上がりますので、値段が高騰した時には暫く待って値段が下がるのを待ったほうが良いと思います。

 2021年12月末にローカルのアマチュア局と一緒にHF帯が受信可能なRTL-SDRを購入しました。値段が格安ということで飛びついたんですが、今回購入したものはHF帯の受信感度がかなり劣っていました。

 ここで紹介しているものと同じ性能と思って購入しましたが、ケースから中身を出して確認したところ、回路構成が全く異なっていました。チューナー経由で受信する方は、同じ回路構成でしたので感度差はありませんでした。一方HF帯のダイレクトサンプリング受信側は明らかに感度差が見受けられました。

 値段が安いのでそれ相応かもしれませんが、購入の際にはお気を付けください。判断の目安としてはSDRの金属ケースの表面に記載されている製品名がRTL-SDR.COMとなっているものがこのコーナーで紹介しているものです。RTL.SDRだけの表示で .COM(ドットコム)が印字されてないものは、HF帯受信側の感度がかなり劣りますので、ご注意ください。



RTL-SDR.COM V3をダイレクトサンプリングモードで動作させ受信した結果

 購入したRTL-SDR.COM V3を動作させてみました。通常のチューナー経由の受信は、USBスティックをパソコンに差込み、 ラジオソフトのHDSDRまたはSDR#起動させると24〜1977MHZの受信に入ります。

 ダイレクトサンプリングモードで動作させる場合は、ラジオソフト側で入力をQ側に切り替えることで0〜28.8MHZの 受信ができます。また通常のチューナー経由に戻す場合は逆の操作で戻ります。

 具体的なダイレクトサンプリングモードへの切り替え方法は下記の画面のとおりです。アンテナの接続は、スティック のアンテナ入力に使用する周波数に応じたアンテナをコネクタ受口に接続するだけです。アンテナのチューナー経由 またはダイレクトサンプリングモード回路への切替はUSBスティック内で自動的に行われます。


 HDSDRでのダイレクトサンプリングモードへの切替方法 


HDSDR画面  @HDSDR画面上のExtIOをクリックする。

 ADisabledをクリックする。

 Bドロップダウンした画面でQinputを選択する。

以上の操作でダイレクトサンプリングモードに切り替わる。  


 SDR#でのダイレクトサンプリングモードへの切替方法 


SDR#画面  @SDR#画面上のConfigure Source アイコンをクリックする。

 AQuadrature Samplingをクリックする。

 Bドロップダウンした画面でDirect Sampling (Q branch)を選択する。

以上の操作でダイレクトサンプリングモードに切り替わる。  


 実際に使用した感じでは、28.8MHZのクロックに超安定のTCXOが使用されていることも あり、受信周波数を指定した場合、放送波の中心がピッタリと合っていました。

 また、ダイレクトサンプリングモード受信は感度が悪いという話をよく聞きますので、 あまり期待をしていなかったんですが、実際に聞いてみるとBC帯のAMラジオ放送を含め、 3.5MHZや7MHZ帯のアマチュア無線、ラジオ日経等々、通常の短波帯は結構強力に入感して いました。

 ただし、14MHZ以上の受信ではイメージ信号があちこちに散見されました。例えば7MHZ(LSB) のシグナルが21MHZ(USB)で入感していました。これ等の対策としてのフィルターの使用が必要 だと判断されました。

 メーカーさんがちゃんと設計した回路で作られているので、感度がいいのは当然の結果かも しれません。最初の方で紹介している概念図のような簡易的な受信では感度が悪いと思われます。

 RTL-SDR.COM V3を使用したダイレクトサンプリングモードでのHF帯受信状態をビデオ撮影し YouTubeにアップしました。非常によく聞こえていましたといっても、どのような状態かは見て いただいた方が早いと考えYouTubeに上げています。

  RTL-SDR.COM V3を使用したダイレクトサンプリングモード受信  (RTL-SDR.COM V3によるHF帯受信状態のYouTube動画を見ることができます)


放熱対策のためプラケースに入れ替え小型ファンで強制空冷

 原型のまま長時間動作させると筐体の金属ケース全体が結構暖かくなっていました。冬のこの 季節で温度上昇が感じられるようでは、真夏では相当高温になる思われます。別項のDVB-T+DAB+FM USB チューナーの発熱対策のページでも紹介しているように、チューナーICは52度の高温になる ようです。

 このようなことから、今回のスティックも金属筐体から取り出し、下の写真のようなプラケースに 入れて、さらに温度上昇対策として小型ファンで強制空冷させるように改造しました。

HDSDR画面  HDSDR画面



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