ディップメーターのコーナー

(最終更新 1998.01.26)


 ディップメーターは、自作するハムにとってなくてはならない測定器の一つです。コイルの共振周波数を測ったり、アンテナの共振周波数を測定したり、その用途は多岐にわたります。私も自作派ハムとして、ディップメーターには随分とお世話になった一人です。

 私の長年愛用のディップメーターは、トリオ(現ケンウッドの前身)のDM−6という真空管式のものでした。長年の酷使に耐えかねてか、数年前から高い周波数での発信出力が弱くなっていました。たぶん内部の真空管(ニュービスタ)のエミ減ではないかと思われます。現在この手の真空管を探すのはまず無理ですし、メーカーにも交換部品として残っていることもないでしょう。

 今どきAC電源のディップメーターを使う時代ではありませんので、これを機会に電池運用可能なFET使用のディップメーターを自作してみました。

 ここで紹介する作品は、1995年1月に完成した液晶表示カウンター内蔵のディップメーターです。




外観1写真 7kb jpg 外観2写真 9kb jpg

 上の写真は自作したディップメーターを正面から撮影したものです。右の写真でわかるように、液晶表示のカウンターを内蔵させており、5個のコイルを使用して1.6MHZ〜217MHZをカバーさせています。

 カウンター内蔵のディップメーターの使い勝手は非常に良く、昔のアバウトな周波数表示の目盛り式に比べ、正確な周波数がディジタル表示されますので、測定器としての利用価値が一層増します。

 最近はメーカー製でもカウンター内蔵式の物が発売されているようで、4〜6万円位の値段がついており簡単に購入できるような代物ではないようです。特にわたしのような無銭家には高嶺の花といったところでしょうか。




ディップメーターの回路について


 トランジスターを使用した回路もあるようですが、過去の製作記事等ではFETを使用した回路の方が深いディップが得られるとなっていました。もともとディップメーターは真空管回路で作られていましたので、特性が真空管に似ているFETを使用した方がベターであることは容易に推察できます。

 そこでFET使用のディップメーターの回路図を探しましたところ、「トロイダル・コア活用百科」(山村英穂著)の中に適当な回路がありました。説明ではトロイダルコア用となっていましたが、手持ちの材料で作れそうでしたのでこの回路図を参考に作ってみました。


 発振回路用のFETは手持ちの2SK241を使用しています。また周波数カウンターを内蔵させるということで、消費電流が少ない液晶表示のカウンターを採用しました。カウンターは秋月電子の「1GHZプリスケーラー+4・1/2桁液晶カウンターキット」を購入し、ケースの中に一緒に組み込みました。




ケース加工について


 大体の回路構成が決まったところで、さてケースはどうしようかと考えました。市販のケースではサイズ的に丁度いいものが見あたりません。さりとてアルミ板を加工してケースを自作するのは面倒です。そこで両面プリント基板を使用してケースを作ることにしました。

 両面基板は秋月電子で10枚1000円で売っているものを購入し、これを加工してケースにしました。全体の大きさは、横幅10.1p、高さ16.1p、奥行き4pで作り上げています。


 各面になる6枚の基板を指定のサイズで切り出し、内側の接合面にハンダを流しケースとして組み立てました。相手がベークの両面基板ですので加工は比較的容易で、少々の寸法のずれは組み立てた後、外側部分をヤスリで仕上げると、それらしく仕上がりました。最終的に外側は銅箔のままでは見苦しいため、黒のスプレーで塗装仕上げをしています。

 ケース上部の内側部分にディップメーターの回路部分を組んでいます。具体的には小さなランドを基板に張り付け、そのランド部分に部品を取りつけています。私はこの手法をトランシーバーの終段パワーアンプ回路部分などで多用しています。

裏蓋を外して見た内部のレイアウト(ケースは両面基板を使用)

裏面写真 9kb jpg

ディップメータ回路部分の拡大(天井板部分に組んでいる)

内部配置拡大写真 14kb jpg




使用した材料について(コイルのボビン等)


使用材料写真 11kb jpg


 上の写真はディップメーターのコイルを作るとき使用した材料を撮影したものです。左端のペンはVペンという商品名で売られているもので、このペンのキャップ部分を95〜217MHZ用のコイルのケースに使用しています。また、左から2番目のペンは同じくPIGMAという商品名で売られているもので、95〜217MHZコイル以外の全部のコイルのボビン用として使用しました。

 これらのペンは、オーディオ用のRCAピンジャックのオスに差し込むと、うまい具合にピッタリ合います。本体とコイルの接続部分にはRCAピンジャックのオスとメスを使用しています。

 具体的には、RCAピンジャックのメスをディップメーターケース本体に、またピンジャックのオスを各コイル部分に使用し差し替え可能な構造にしています。オスのRCAピンジャックは、ネジ切りのキャップのついた物を使用すると、ボビンケースを取りつける際に加工が楽に出来ます。

 写真の右下のものが使用したFM.AMラジオ用バリコンです。ハムショップでジャンク品として売られていた物で1コ280円で購入しました。バリコンはたまたまジャンクのエアーバリコンが入手できましたので使用しましたが、この部分はトランジスターラジオに内蔵されているポリバリコンでも勿論使用できます。

 またバリコンのかわりにバリキャップを使用したものも実験してみましたが、電源電圧の関係で周波数可変幅が狭くなり希望したものが出来ませんでした。




完成した各コイル


コイル写真 7kb jpg

 上の写真は完成した各コイルです。左から1.6〜5.0MHZ、3.6〜11.0MHZ、8.8〜29.0MHZ、27〜96MHZ、95〜207MHZ、95〜217MHZの各周波数をカバーしています。

 95〜207MHZのコイルはヘアピン構造(U字形)で作っています。また、95〜217MHZのコイルは通常のヘリカル空芯構造(円形)で作っています。この2つのコイルは、使用する場所によって使い分けができるようにしています。

 コイル巻きについては、カウンターが内蔵されていますので制作が楽で、ボビンに適当な回数巻いて実際に発振させ、予定した周波数より低ければ巻き数を減らし、逆に高ければ巻き足すという方法がとれます。

 巻き足しは作業が困難ですので、多めに巻いて減らしていく方法がベターです。これでも失敗したら、一つ上の周波数のコイルに変更して使うという手もあります。

 私はできあがったコイルにヒシチューブ(熱を加えると収縮する)をかぶせ、コイルの巻き線のズレ防止と保護をしています。

 写真右端のワニグチクリップのついたものは、水晶などを挟んでテストする等に使用するために作っています。ゼムクリップを挟んでこれで何MHZを発振するかな?と試したこともあります。




使用した感じ


 今まで使用していたACコード付きに比べ、電源の100Vを準備する必要がありません。これはアンテナ調整などアウトドアー作業時(特にタワーの上など)には大きなメリットです。

 周波数カウンターを内蔵させたことで、細かい周波数の表示が出ますので調整などでは精度が向上します。またカウンターに液晶表示のものを採用したため、明るい場所でも表示がはっきり読みとれます。この部分にLED表示を使用すると、明るい場所では非常に見づらく使用に耐えません。

 この液晶カウンターは明るい場所で見やすいメリットの他に、消費電流が極端に少ないメリットもあります。製作構想段階での電源は単三電池×6コを考えていましたが、出来上がって全消費電流を測定したところ、カウンター(プリスケーラーも動作)とディップメーター回路すべてが動作した状態で、何とわずか10mAでした!!そこで電池は単三は使用せず、積層乾電池の006Pに変更し軽量化を図っています。

 費用的には液晶カウンターが5700円といくぶん高めですが、それ以外は比較的安価なジャンク品などが使用できます。トータルで1万円もあれば十分お釣りがくると思います。

 カウンター部分はディップメーターだけで使用するのはもったいない話ですので、ケースにBNCプラグを取り付け通常のカウンターとして使用できるようにしています。周波数カウンターにディップメーターの回路がちょっとお邪魔しているといった感じで出来上がっています。

 
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