周波数カウンターのコーナー

(最終更新 1997.12.15)
(一部内容追加 2023.02.17)


 周波数カウンターはディプメーターとともに、自作派ハムには必須のアイテムといえます。カウンターが表示した周波数を基準に作業を進めますので、その精度が高いものが望ましいのは当然ですが、絶対正確でないと困るかというとそうでもありません。

 私の考えでは、10HZ台までの計数誤差は全く問題ないと思っています。このズレもSSBトランシーバーのキャリアポイントなどを合わせる時の話で、運用周波数等についてもバンドエッジでの運用を除けば、プロの放送局(固定周波数運用)ではありませんので問題になりません。

 ご承知のように周波数カウンターの精度は、基準発振の精度で決まります。どうしても正確でないとイヤだと言う方は、基準発振部分にお金をかければこの問題は解決します。

 前置きが長くなりましたが、今さら一昔前のTTL10進カウンターを組み合わせた自作カウンターを紹介しても、化石人と思われそうですので、ここでは比較的最近自作したカウンターをご紹介します。


4・1/2表示周波数カウンター

※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。 

   


 上の写真は1982年5月に製作した【4・1/2表示の周波数カウンター】です。メインカウンターのICに、沖電気のμPD851Dを使用しています。 周波数カウンターを自作された経験のある方は【4・1/2表示周波数カウンター】がどういう桁表示になっているか分かると思います。

 4・1/2表示とは、最初の一桁目だけが1または0しか表示せず(※0の場合はゼロサプレス機能により何も表示されない)、あとの4桁は通常の0から9までカウント表示するカウンターです。以上のことから、実質的には4桁表示のカウンターと考えた方が早いと思います。

 カウント可能な上限周波数は1200MHZまでです。入力レンジ切り替えは下図の通り、0〜100MHZ、0〜250MHZ、80〜1200MHZの3段切り替えにしています。

ブロックダイアグラム

 このタイプは、TTLの10進カウンターを多段接続してディスクリートで組み立てる時代から、現在のワンチップ専用ICが出るまでの過渡期段階で使用されていたもので、今更この方式で組み立てるのは時代錯誤といえます。

 そのようなことから、この自作カウンター紹介では、ブロックダイアグラムのみの紹介にとどめ、自作するなら次のワンチップ専用ICを使用する、8桁カウンターをおすすめします。



8桁表示周波数カウンター

 下の写真は、1994年11月に完成した8桁表示の周波数カウンターです。メインのカウンターIC部分にはICM7216Bを使用しています。 ICM7216Bはカウンター専用のICで、カウンターを構成するために必要なすべての機能を内蔵しています。

 その昔TTLの10進カウンターを多段接続し、やれリセットパルスだ、ストローブパルスだと大騒ぎしていたことを考えると、苦労したことが懐かしくもあり、この分野での技術の進歩に目を見はるばかりです。

 この8桁周波数カウンターは、メインカウンター回路基板、前置アンプおよびプリスケーラ回路基板、基準発振回路基板、電源回路基板の4つで構成されています。下の右側の写真でいいますと、左上に前置アンプおよびプリスケーラ回路基板、右上に基準発振回路基板、左下にメインカウンター回路基板、右下に電源回路基板をそれぞれ配置しています。

※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。 

    




各回路とその基板について


 ここでは、電源回路を除く3つのユニットの回路図とそのプリントパターン図を以下でご紹介します。









ブロックダイアグラム




使ってみた感じ

 使い勝手は、8桁を同時に表示しますので、前項の4・1/2桁カウンターのように、全桁確認のためゲートタイムを切り替える必要がありません。8桁カウンターを使い始めると、少数桁のカウンターを使う気がしなくなります。

 ところで、基準発振回路がいかにもお粗末だと感じるかもしれませんが、私はこの部分にお金をかけるのは無駄だと思っています。もし正確な周波数測定が必要な場合は、事前にJJY(10MHZ標準電波)で基準発振周波数を校正すれば、アマチュア的な使用目的(※10ヘルツ台の誤差は承知の上)では特に問題はないと思っています。




  10MHZ基準発振器の交換  

(一部内容追加 2023.02.17)


 ここのところ必要に駆られて、数十年前の自作品の改良作業をしています。前回はSWR計でしたが今回は周波数カウンターとYAESUのFT-817の基準発振の取替作業を行いました。

 周波数カウンターは1997年12月15日以来、実に26年ぶりの更新です。最近ローカル局とコンタクトした際に、当局の周波数がドリフトしているようだとの指摘を受けました。周波数変動の原因としてはキャリア周波数(15MHZ)か局部発振(6MHZ)のいずれかが変動していると考えられます。周波数カウンターでそれぞれの周波数の変動の様子を確認すると原因が判明すると思います。

 ところがここで紹介している自作の周波数カウンターは、計測周波数や安定度を決める10MHZの基準発振が一般的なパーツを使用した簡易的な回路構成になっています。そのようなことから測定結果の計測値および安定度ともその精度は低いといえます。

 そのうち基準発振の精度のいいものが入手できれば取り替えたいと思い、過去に10MHZの恒温槽付きの基準発振器をネットオークションで入手しましたが、何分にも発振器自体のサイズが大きく、ここで紹介したカウンターのケースに収まらず、基準発振部を外付けで設置するしか方法はありませんでした。

 このようなことから、基準発振部を外部に設置した使いずらい格好になるため、あまり乗り気ではなくそのうちに作業をと考え、放置したままになっていました。そのような時にアマゾンで10MHZの基準発振として使えそうな品物が見つかりました。見つかった基準発振器は下記のような恰好をしています。

   販売されている10MHZ恒温槽付き基準発振器※現時点での最安値は2,011円

   
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
恒温槽機能付き10MHZ
基準発振ユニット
わたしは2,477円で購入しました
現時点では最低価格は2,113円のものが出ています
ウオームアップ時電流0.75A
5分間、通常動作時電流0.3A


 さっそく購入した基準発振器を動作させ、自作の8桁カウンターで周波数を計測してみました。測定結果は10.000.030HZと30HZほど高く表示されています。この30HZの偏差は基準発振側の周波数のズレなのか、カウンター側の誤差なのかはっきり分かりません。

 しかしながら、今回購入した基準発振側のズレは考えられませんので、自作周波数カウンターの10MHZの基準発振を再調整し10.000.000HZと表示されるように調整しました。この状態で数時間放置し周波数の変動の具合を見てみました。

 測定結果は予想以上に安定しており、5時間ほど放置後で1〜2HZの変動しか見られませんでした。この変動は基準発振側かカウンター側のズレなのかは分かりませんが、自作カウンター側の基準発振がお粗末ですので、多分カウンター側の基準発振のドリフトと思われます。この測定結果から見ますと、自作カウンターの基準発振がお粗末な割には、そこそこ表示周波数の変動幅が小さく、まんざら捨てたものではないなーという感じでした。

 考えてみますと、カウンターの基準発振の10MHZは、1/10,000,000された1HZ(1秒)でカウンターのゲートタイムとして使用されます。このようなことから、10MHZで少々ドリフトしてもその影響は1千万分の1になります。このためドリフトの影響はかなり軽減されると考えられます。

 テストは終わりましたので、カウンターの基準発振を今回購入した温度補償付きの基準発振に取替ました。具体的にはカウンターの10MHZの基準発振回路の水晶を外し、水晶が接続されていた2SK241のゲートに今回購入した恒温槽機能付きの10MHZ基準発振回路の出力を0.1μFのコンデンサーを介して接続しました。回路切替が完了したところで、さっそくNO5号機の局発の6MHZのPLL出力を測定してみました。

 1KHZ以下の調整をするセンタークリック付ボリュームをセンター位置に合わせて、補正のボリュームを微調整し6.000.000HZになるように合わせて計測を開始しました。この状態で放置し5時間後の表示周波数を確認してみました。

 測定結果は+2から-3HZの範囲内で非常にゆっくりとした周波数変動が見られましたが、計測を中断した5時間後の時点では、下記の写真のように-3HZになっていました。観察した時間内では最大値が3HZの変動に収まっていました。NO5号機のPLL回路では1KHZ以下の調整にバリキャップを使用していますので、周波数のドリフト幅が大きいのではないかと心配していましたが、測定結果はなかなか優秀で特に問題になるような数値ではありませんでした。

 ということで、問題なく動作することが確認できましたので、今回購入の基準発振器をケース内に納めることにしました。ケース内を見渡してもそのまま設置できる空スペースが見当たりませんので、下記右端写真のように既設の基準発振器の上部に二段ベットのように重ねて設置しました。

     
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
10MHZの水晶を外して0.1μFで
今回購入の基準発振器に接続
NO5号機の6MHZのPLL出力を
計測中、5時間後のドリフトは?
5時間後のドリフトは-3HZ
思ったより周波数変動が少ない
既設の基準発振回路基板の上に
購入した基準発振基盤を設置


 取替後の使用感は非常に安定した計測をしているような感じがしました。計測値の信頼性が今一だった自作カウンターが、安心して使えるものになったと思っています。(※若干過大評価か?)

 旧型のカウンターで基準発振の精度があまり良くないとか、秋月の自作カウンターキットで作られた方など、基準発振の安定度が今一つの方は、2,000円ちょっとの投資で基準発振のアップグレードができますのでぜひお試しください。




  ”ついでに” FT-817の基準発振器も取替  


 ついでにYAESUのFT-817に搭載されている基準発振22.625MHZを高安定度のTCXOに取り替えました。これは今回の周波数変動の確認のためにFT-817でモニターして確認しようと考えたためです。そのためにはモニターする受信機の周波数が安定していないと比較ができません。

 この交換については以前からやりたいと考えていましたが、当時は9,000円位していましたので二の足を踏んでいました。ところが昨年12月にアマゾンで確認したところ1,600円位で互換品が出ていました。純正品との価格差があまりにも大きく果たして使い物になるのかと考えましたが、値段が1,600円位ですのでダメもとで購入してみました。

 パーツの交換は非常に簡単でハンダ付け等の作業の必要はなく、既設の基準発振器ユニットを手で引き抜き、新しいユニットを手で差込むだけで作業が完了しました。交換の際に、もともとのユニットはプリント基盤に3Pと4Pの貫通穴が空けてあり、パーツ取付面が上側になっていました。今回購入のものにはこの穴が空いておらず、下の写真のようにプリント基盤面が上になるような取付しかできませんでした。

 この向きでいいのか心配しましたが、パーツ取付面が上になるような取付ができませんので、とりあえず写真のような向きで取付をしました。大丈夫かなと心配しながら電源を入れて動作させましたところ、何の問題もなく動作しました。交換作業が完了後さっそくFT-817を動作させ1時間ほどエージングさせた後10MHZのJJYの信号を受信して周波数のズレを確認してみました。

 ここでわたしが行っている具体的な確認方法を紹介しますと、最初に10MHZのJJYの信号を受信します。この場合受信モードはSSBモードにした方が判断がしやすくなります。モードはUSBでもLSBでもかまいません。LSB設定でチェックした場合は、確認後USBに切替再度ズレを確認します。また受信するJJYの信号は10MHZに限ったことではなく、5MHZでも15MHZでも良く、できるだけ信号が強く入感する標準電波(JJY)を選択します。

 この場合受信したJJYの信号が弱いと数ヘルツ台の周波数のビート音が確認できません。9+位の信号強度があれば数ヘルツ台のズレのビート音が確認できると思います。強いJJYの信号を受信した状態で音量ボリュームを上げていくと、周波数のズレの分だけビート音が出ます。数HZのズレ場合はポロポロポロというような音がスピーカーから出ます。もし周波数を可変して合わせるような場合は、このポロポロ音の間隔が広くなるように周波数を調整します。周波数が合うとポロポロ音の間隔が広くなり最後はブーという音(ゼロビート音)になり周波数が合ったことが分かります。

 蛇足ですが、わたしはSSB送信機のキャリア周波数合わせの際にも、この方法を使っています。受信機のアンテナ線を送信機のSSBジェネレーター付近に近づけてSSBのシグナルを受信します。この時受信機の周波数はキャリアの周波数に合わせます。わたしの5号機の場合は15.000MHZになります。

 送信機の場合はマイクがあるためピヨピヨピヨというようなハウリング音になります。ピッタリ合った時にはピーという連続音になります。もちろんこの方法では受信機の精度が問題になります。一般的な受信機を使用しますと、その受信機の周波数精度で調整されることは言うまでもないことです。

 以上のような測定方法で測定した結果は0.5HZ程度のズレが出ていました。この程度の周波のズレですとアマチュア的には全く問題ないズレです。格安の1,600円の基準発振ですが、結構いい線いっていました。9,000円位する純正品と1,600円位のバッタもん(失礼!互換品)と果たしてどれ精度差がでるか興味があるところですが、案外ほとんど変わらないかもしれません。

 標準実装品と互換TCXOの周波数変動を測定されたブログが見つかりました。標準実装品はTCXOではありませんので、結構周波数が変動しているようです。一方互換品のTCXOはやはり周波数の変動はほとんど見られず、値段の割には安定度に問題はなくやはり交換するメリットはあるようです。

   標準実装品と交換した互換TCXOの周波数変動の比較 ※標準実装品と交換した互換TCXOの周波数変動の測定結果を報告されています。

   アマゾンで販売されている基準発振器※互換品 現時点で最安値は1,474円 わたしは1658円で購入しました。

     
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
基準発振器は左下の部分
既設分は引き抜いて取外し済
基準発振器取付部拡大 左側4P
右側3Pの接続ピンが立っている
交換する新しい基準発振器
右側に4Pの受け口が見えている
3pと4pのピンに向きを合わせて
基準発振器を差込んで交換完了


 YAESUのトランシーバーのFT-817/857/897をお持ちの方で基準発振のアップグレードをされていない方、わずか1,600円位の投資ですので、この機会に取り替えを検討されたら如何でしょうか。ちなみに金額は税込み、送料およびコンビニ払いの振込料は無料でした。

 ということで自作トランシーバーの周波数のドリフト問題は、基準発振器を取替えたFT-817と、同じく基準発振を取替えた周波数カウンターでそれぞれ計測して再調整をしました。少し長めに周波数のドリフトもチェックしましたが、見た限りでは大きな周波数ドリフトはありませんでした。

 そのうち周波数のドリフトを指摘したローカル局に聞いてもらい、周波数のズレやドリフトがあるかのリポートをもらう予定です。一応精度がアップしたと思われる測定器類(※受信機も立派な測定器です)でチェックしていますので多分問題ないと思っています。



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