QRP用SWR計のコーナー

(最終更新 1998.08.09)
(一部内容追加 2023.01.13)


 アンテナを自作し、そのマッチング状態(SWR)を調べるためにはSWR計が必要です。もちろん市販品がたくさん出まわっていますので、それを購入すれば簡単ですが、それではアマチュア無線技師としては面白くありません。

 SWR計の自作は難しいかというと、1200MHZ帯用などは配線図に表せないノウハウが必要なようですが、本機のような50MHZ帯までのものでは指定の通り作ると、誰が作っても同じような性能のものが自作できます。

 ここで紹介するSWR計はCM型と呼ばれるタイプで、大体0.5W位のパワーからSWR測定が可能です。このようなことから、あえて「QRP用」というネーミングにしています。

 もちろんハイパワーでも問題なく使用できます。性能上の特徴としては、高い周波数でも低い周波数でもパワーが同じなら、メーターの振れはほぼ同じ位置になることです。わたしが自作しているSWR計は下のような格好をしています。


外観写真 JPG 7kb      内部写真 JPG 9kb


SWR計の回路について


 SWR計の回路は下記通りです。この回路は「トロイダル・コア活用百科」(山村英穂著)の中で紹介されていたものを、少しだけアレンジして作っています。

SWR計回路図 gif 4kb


検出部の構造とその作り方


 SWR計の心臓部ともいえる検出部は、下の写真のような構造になっています。写真では細かい部分が見えないので、順を追ってどのような作り方ををしているかを説明します。

検出部写真 JPG 16kb



ベース基板の構造

 ベース基板には、生の両面プリント基板(加工していない基板)を使用しています。生基板の上に50Ωの伝送路となる幅2.7oの細長いランド2個と、その他部品を取りつける小さいランドを数個貼り付けています。具体的構造は文章での表現は難しく、カット図で理解していただく方が簡単にいきそうです。詳細は下記図面で確認下さい。

ベース基板の構造図 gif 6kb

検出コイルの構造

 FTタイプのフェライトコアに0.5oくらいのエナメル線を10回巻きます。コイルを巻いたコアの中に、端末処理をした短い同軸ケーブルを貫通させます。
 この同軸ケーブルは、片側のみ外皮アミ線を引き出しておきます。具体的構造は下のカット図で確認下さい。

検出部コイルの作り方 JPG 6kb

検出部コイルの写真 JPG 6kb


部品配置について

 ベース基板とコイル部分が完成したところで、ベース基板にそれぞれ部品を取り付けていきます。具体的な部品配置は、下の部品配置図で確認して下さい。
 扱う周波数は50MHZまでですので、それほど神経質になることはないんですが、できるだけ左右対称になるよう部品を取りつけるとうまく動作するようです。

基板部品取り付け図 gif 7kb

基板の固定方法について

 最後にベース基板をケースに取りつけますが、M型コネクターにベース基板を接続するとともに、基板をしっかり固定する必要があります。  この方法として、わたしは1.6oの裸銅線を使用して基板の固定と接続をしています。具体的方法は下のカット図で確認下さい。

基板固定方法図 gif 10kb


最終調整について

 組立が完成したところで調整が必要になります。調整といっても、40PFのトリマを2個調整するだけです。

 具体的には、使用する最高の周波数(28MHZまたは50MHZ)のシグナルを入力側に入れ、出力側にはできるだけ反射の少ないダミーロードを接続します。この場合の入力側はメーターに向かって左右どちらのコネクタでもいいんですが、私の場合は、左側を入力側(無線機側)、右側を出力側(アンテナ側)にしています。

 信号を入れた状態でメータ切り替えスイッチを切り替えてみると、いずれか片側のメーターの振れが少ないはずです。切替スイッチを振れの少ない方側に切り替えた状態で、メーターの振れが最小になるように40PFのトリマを調整します。この時レベル調整用ボリュムは、最大感度側に回しきり、できるだけメーターを振らせた状態で調整します。

 次に入出力(信号入力側とダミーロード接続側)を逆に接続し直し、同じように信号を入力し、先ほど調整したトリマと反対側の40PFトリマを同じようにメータの振れが最小になるように調整します。

 最初はどちらの40PFトリマを調整するかが判らないと思いますが、調整してメータの振れが変化する方のトリマを調整します。ただし接続を逆にして調整する2回目の調整トリマは、必ず最初に調整した反対側のトリマになります。

 ここまでの調整が終わったところで、また最初の接続に戻し再調整、逆接続で再調整を行い調整は完了です。


使用方法について

   具体的使用方法は、まずスイッチを進行波側に切り替え、メーターが丁度フルスケールになるようボリュームで振れを調整します。次にスイッチを反射波側に切り替え、その時のメーターの指針の位置からSWR値を読み取ることになります。

 SWR値の目盛りのつけ方ですが、SWR計のアンテナ側に75Ωの負荷抵抗を接続し進行波側でをフルスケールに調整した後、反射側に切り替え針が示している位置がSWR1.5という目盛り方が一番手っ取り早いと思われます。

 通常運用ではアンテナのSWR値が1.5(反射電力4%)以下になれば特に問題ないと思われますので、その基準となるSWR1.5の位置が分かればいいのではないでしょうか。あとは本人が納得するまで、ひたすら反射波が限りなく0(1.0)に近づくようにアンテナの調整を繰り返せば済むことだと思います。



  メーターの取り替え  

(一部内容追加 2023.01.13)


 1998年8月9日以来、実に25年ぶりの更新です。このSWR計を作った1998年ごろは小型軽量であることから、3ELのZLスペシャルの調整にこのSWR計を盛んに使用していました。わたしがSWR計を使用する場合は、できるだけアンテナ直近で使用するように努めてきました。なぜなら同軸ケーブルが途中に入ることにより、アンテナの正確なSWR測定ができないと考えたからです。

 同軸ケーブルを途中に入れて測定する場合は、入る同軸ケーブルの長さを1/2波長の整数倍にすれば、アンテナ直近で測定したのと同じ結果が得られるようです。ところがこのケーブルを作るのが結構厄介で、アナライザーやディプメーターを駆使して長さを正確に切り出すのは、結構手間がかかる面倒な作業になります。

 昨年はZLスペシャルアンテナの整備でSWR計を使用する機会が度々ありましたが、いずれの測定でもアンテナ直近ではなく、同軸ケーブルが途中に入った状態でSWRを測定していました。一方1998年ごろの測定ではコン柱に登りアンテナ直近で測定ができましたので原則通りの測定が可能でした。

   
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
自作SWR計をアンテナ直近に
設置しSWRを測定中(1998年頃)
重いメーカー製のSWR計を
使用して再確認(1998年頃)
RF-1を使用してアンテナ直近で
共振周波数を確認(1998年頃)
25年前はこのような芸当が
可能でコン柱の頂部で作業中


 ところが2022年9月末にアンテナの設置場所をコン柱の上から車庫の屋根上に変更したことから、大きくて重いSWR計を使用してアンテナの直近での作業が困難になりました。そのような理由からここ最近は同軸ケーブルが途中に入った測定ばかりになっていました。

 昔のようにアンテナ直近でSWRを測定したいという思いは強く、25年前に活躍していた当初作成したSWR計を整備して再活用しようと考え始めました。しかしながら当初作成したものはSWR目盛りもアバウトで、性能的に見てメーカー製と比べてどうなのかの検証もできていませんでした。

 SWRの目盛りについては、25年前の最終更新では75Ωのダミー抵抗を接続し疑似的にSWR1.5の状態を作り出しメーター上のSWR1.5の位置を確認してくださいとしていましたが、100μAの電流計を使用した場合の電流計の指示値とSWRの関係を計算で出してみました。計算結果は下記の表のようになりました。



 この表の見方は、100μAの電流計の20μAのところがSWR1.5の位置に、また33.4μAのところがSWR2.0、更に50μAのところがSWR3.0になるという見方になります。SWR2.0の33.4μAの位置が微妙ですがSWR1.5とSWR3.0の位置は電流計の目盛りがはっきり分かりますので、予め電流計の全面カバーに目印を付けておく方法等があります。

 この計算結果を見てふと思ったんですが、SWRの目盛りが入った電流計が入手できれば全面カバーに目印をつけたりする必要もなくなります。100μAの電流計も新品で大体1000円近くするようです。その辺も考慮するとSWRの目盛りが入った中古のメーターが安く手に入れば要らぬ手間も省けますし、更に見栄えもよくなります。

 昨年ネットオークションでSWR目盛りが付いたメーターが出品されていたのを偶然見つけました。とりあえず落札しておくことにしました。そのうち取り替えようと思いそのまま置いたままになっていました。その時に落札した電流計は下記の写真のような品物でした。

 寒くなってアンテナ関係の屋外作業ができなくなりました。そのような時にSWRメーターの交換が終わっていなかったことを思い出しました。暇つぶしのメーターの交換作業をしました。

 最初に取り付けていた電流計は昭和45年製造(※メーターの裏面に検査45.4.27加藤の丸印が押印)の可動コイル型のもので、しっかりした構造で結構重くメーター単体で重量が140gほどありました。ところが今回取り付けたものは、そのほとんどがプラスティック製の材料で非常に軽いものでした。多分メーカー製のSWR計に取り付けてあったものの片割れだと思われます。

 落札金額も確か800円位でした。メーターの取り替え後のSWR計の総重量は240gでした。アルミケースとプラスティック製のメーターしか使用していませんので非常に軽くなりました。この重量ですとアンテナの給電点付近にぶら下げて測定ができますので、アンテナ直近での測定が可能になります。


  


 メーターの取り換えが終わり久しぶりに動作させますので、50MHZ帯で2つの40PFのトリマーコンデンサーを再調整し校正をしました。また測定可能な最低パワーについても測定してみました。1.8MHZ帯と50MHZ帯の2つのバンドで比較してみました。結果は両バンドとも0.5Wで進行波がフルスケールを超過しました。このことからパワーが0.5W程度あれば十分測定可能という結果でした。

 せっかくの機会ですので手持ちのメーカー製SWR計のWELZのSP-350で測定可能なパワーを確認してみました。50MHZ帯のパワー0.5Wでは、調整ボリュームを最大位置にしても、残念ながら進行波のメーターの振れがフルスケールになりませんでした。つまりWELZのSP-350ではパワー0.5Wでの測定はできないという結果になりました。もっとも0.5W程度でSWR測定をすることもないでしょうから特に問題にはならないと思います。

 次に各バンドで通過パワーが5Wと0.5Wの時にSWR値にどれ位の差が出るかを調べてみました。ハイパワー側が100Wくらいのものと比較ができるといいんですが、残念ながら当家には5W以上のパワーが出る無線機がありませんのでハイパワー側が5W止まりになっています。

 測定結果は下記の写真のようになっていました。51.580MHZでパワーが5Wの時のSWRは2.3になっていました。同じ周波数でパワーを0.5Wに変更後再度SWRを測定すると2.1になっていました。もちろん各々の進行波をフルスケールに調整後のSWR値です。パワーが1/10の時にSWRの差は0.2程度低く表示されていました。

 定量的に増加すると考えた場合、推定ですがパワーが5Wの時のSWRが2.3でしたので、もしパワーが10倍の50Wの時にはSWRは2.5を表示するのではないかと思われます。いずれにしてもパワーによる影響は若干出るものの、さほど大きな差はないという実測結果でした。もっともパワーが0.5Wと5Wの比較しかしていませんので、あまり参考にはならないかもしれません。

   
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
1.8MHZ帯0.5Wで進行波側が
フルスケールを超過した
WELZのSP-350では進行波側が
最大で60%位しか振らない
51.580MHZパワー5W時の
SWRは2.3であった
51.580MHZパワー0.5W時の
SWRは2.1差は0.2であった




  メーカー製と自作品のSWR値の比較  


 自作のSWR計の方が感度がいいことが分かりました。そこで別項で自作した50MHZのIV電線八木アンテナを負荷にして、実際にWELZのSP-350でSWRを測定したあと、次にSWR計を自作のものに取り替えそれぞれのSWR値を比較してみました。

 測定の際には、SWR計の反射波が高く出るような周波数を設定して測定しました。結果は下記の写真のようになっていました。SP-350はSWRが1.8でした。自作のSWR計は2.25になっていました。

 SP-350がSWR1.8、自作品は2.25と微妙に違っています。自作のSWR計の方の振れが大きいため感度がいいようです。微弱な反射波を確実に拾い上げているのかもしれません。念のためアンテナの共振点の51.200MHZでSWRを測定すると1.09になっており、これはSP-350のSWR値とほぼ同じ数値でした。

 この測定を行う前にプロのダミーロードを負荷にして、50MHZの5Wで反射波が0になるようトリマコンデンサーを調整した際も、メーター指示はほぼ0を指していましたので、測定した反射波の数値は正しいものと判断されます。

 そういえばアンテナアナライザーのNanoVNAで測定した値が、WELZのSP-350で測定したものより0.2〜0.3程高く出ていたのを思い出しました。ひょとしたらNanoVNAと同じような測定結果が出ているのかもしれません。さてどちらの方の数値が正しいと判断するか迷うところですが、とりあえず数値の高い自作品の方が正しいとしてアンテナ改造作業をしようと考えています。

   
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。
SP-350で51.600MHZでの
SWR値は1.8であった
自作品の51.600MHZでの
SWR値は2.25であった
共振点の51.200MHZではSWR
が1.09でSP-350とほぼ同じ
3.5MHZ 5Wでの進行波の振れ
フルスケールの15%位であった


 ところでSWR計を自作する場合、全部のパーツを揃えると結構な値段になりそうです。オークションに時々出品されている上記写真の右端の小さめのSWR計は、高い周波数用のものが多く、信号の検出方法が違うためHF帯では感度が悪く、相当なパワーをかけないとSWRの測定ができません。

 そこで上記右端の写真のものに実際に3.5MHZ帯の電波を乗せて実測してみました。使用可能周波数は3.5〜145MHZになっていますが、3.5MHZ帯5Wでは感度調整ボリュームを最大感度に調整しても、指針の振れはフルスケールの15%くらいしか振りませんでした。多分10WでもフルスケールにはならずSWR測定ができないと思われます。

 このようなものは比較的安い値段で落札できますので、これ等を改造して自作すると結構安価に仕上げることができると思います。具体的にはケースや2個のメーター、2個の信号検出用ダイオード、更に2個のM型コネクター、感度調整用の2連ボリューム等、主要部品をそっくり再利用し検出ユニットだけを自作して組み込むという方法になります。

 ただしオークションでこの手のSWR計購入する際は、メーターが不良でないかをよく確認をしておくことが肝要です。この場合写真だけで判定するのは難しいかもしれませんが、入出力に何も接続されていない(動作中ではない)のにメーターの指針が0ではなく振れているようなものは、メーター不良と思った方がいいかもしれません。

 なお検出部を自作する場合、前段で紹介している検出部は、見ての通りそれ程作るのは難しくはありません。検出部は幅2.7mmの50Ωの伝送ラインを引いていますが、下図のように10PFが接続されている部分で伝送路を切って、そこに同軸ケーブルを接続して、その同軸ケーブルの両端を入出力のM型コネクターにそれぞれ接続するという方法を取ればいいと思います。

 上記の回路図はメーターが2個ついたメーカー製のSWR計のパーツを再利用して組み立てる場合の回路図になります。進行波用のメーターと反射波用のメーターがそれぞれ付いていますので、切替スイッチの必要がなく進行波用のメーターがフルスケールになるように感度調整ボリュームを調整した時の反射器側の指針の振れが反射波(SWR値)になります。この回路では感度調整ボリュームが2連ボリュームで連動して同時に動く必要があることはいうまでもないことです。

 HF帯(特に1.8MHZ帯)のSWR測定をしたいが、手持ちのSWR計では進行波がフルスケールにならず測定ができないという方、上記の中古SWR計を改造して再利用する方法で自作されたらいかがでしょうか。

 


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