2021年12月19日に最後の更新をし、年末年始と寒さを理由に作業をサボっていました。ハイバンドのコンディションアップまでに作り上げればいいやという思いもあってか、そのうちにと思っている間に、4月を迎えてしまいました。さすがにこりゃいかんと反省し4月に入ってやっと少しづつ作業を再開しました。昨年の最終更新の際に50MHZ帯は関心があったが、TVIの関係で運用を諦めていたことを紹介していました。ところがご存知の通りテレビ放送がアナログ放送からディジタル放送に変更になり、また使用する周波数も470MHZ帯に変更になりました。これにより運用を諦めていた50MHZ帯の使用が可能になっていました。
”運用できない=アンテナが必要ない”から”運用する=アンテナが必要”という図式になりました。昨年の一連の改造作業の中では共振周波数の測定をしたのみで、実際に電波を乗せてSWRの測定をする作業をしていませんでした。そのようなことから、今回はエレメント支持用のグラスファイバー製釣り竿を、新しく見つけたFRP棒に変更し、実際に電波を乗せてSWRを測定する一連の作業を開始しました。
今回もご多分に漏れず、意外な展開になり試行錯誤を繰り返していました。ハイバンドのコンディションアップも近づいているような感じです。試作中の2エレは大体目途がつきましたので、とりあえず現状の物をご紹介します。
このあと引き続き3〜4エレ化を計画していますので、この2エレは一旦このままで、3エレへの改造作業に入る予定です。前述の意外な展開については、次の作業が終了した時点で時間がとれましたら、追記の形でご報告する予定です。
現在の試作品の諸特性
昨年末にご紹介したエレメントデータから大幅に長さが変更になっています。まさにここが意外な展開といえるところです。この説明を始めると時間がかかりますので、色々あってこのデータになったとご理解ください。
エレメントデータは下記の表の通りです。大きく変わったのは、エレメント長さのほか、MMANAの計算で使用するフィーダー幅の値が0.03mから0.105mに変更になったことです。また、従来使用していた75Ω:50Ωの変換回路を使用せず、ソーターバランのみを設置した状態でSWRを測定しました。としておりましたが、やはり気になりましたので、取り急ぎ75Ω:50Ω変換回路を作りソーターバランを入れているプラケースの中に一緒に入れました。
変換回路を入れた場合と入れない場合のSWR値の違いは表の通りです。入れた場合はSWR1.5の範囲が52MHZまで広がっていました。できるだけ広い帯域で使いたいと思われる方は、マッチング回路を入れた方がいいようです。今回作った変換回路の説明を下の方でしていますので、興味がおありの方はご覧ください。
なおSWRの測定は、約20m位の長さの同軸ケーブルを経由した室内で測定しました。そのようなことから、この同軸ケーブルによる影響があるかもしれません。このような環境下で測定した結果が下記のようになっていたとご理解ください。
※各写真上をクリックすると拡大写真が見られます。 プラケースに3か所穴を空け
フィーダー線を貫通させるソーターバランをコネクターと
フィーダー線の間に入れるRf部拡大 各接続部分に
ビニールテープを巻き保護プラケースに蓋をかけ完成
最後にテープを巻き防水処理
上記のエレメントデータの計算結果を下記でリンクさせました。興味がおありの方は下記ファイルをダウンロードしてください。MMANAソフトでファイルを開くと、当該アンテナの詳細な計算内容を見ることができます。参考までにコメットのCA-52HB(2EL HB9CV)を計算してみました。興味がおありの方はご覧ください。
50MHZ.MAAのダウンロード コメットCA-52HB.MAAのダウンロード
75Ω:50Ω変換回路の作成
75Ω:50Ω変換回路を入れた場合と入れなかった場合のSWR特性は最下段の表の通りです。変換回路を入れると若干SWRが下がるようです。またSWR1.5の範囲内が52MHZ付近まで延びています。できるだけ帯域を広げたいとお考えの方は、ここでご紹介する変換回路の組み込みをおすすめします。変換回路の作成状況を写真でご紹介します。なお本文の中で「多目的基盤」とあるのは私が勝手に名前をつけただけで、ネットオークションで出品されていました。非常に格安(300円)で出品されています。今回以外のケースでも色々な使い方ができますので、この機会に購入されることをおすすめします。
多目的基盤販売のヤフオクサイト ※あっという間に売り切れになったようです。そのうちまた出品されると思います。アラート登録を!
新たな材料を使って組み立て
過去に作ったZLスペシャルアンテナは塩ビパイプにグラスファイバー釣り竿を組み合わせて作っていました。21MHZ用の場合は片側のエレメントの長さが約3.5mほどありますので、どうしても釣り竿のお世話にならざるを得ない状況にありました。
ところが、50MHZ用になりますと片側のエレメントが約1.5m位しかありませんので、わざわざ値段の高いグラスファイバー製釣り竿を使うまでもないのではと考えていました。そのような中で、ZLスペシャルの制作記事で面白そうな部材を使われているのを見つけました。
制作記事ではFRP棒と紹介されているだけで、商品名は書いてありませんでした。近所のJA(農協)の資材売り場を覗いてみると「ダンポール」という製品名で販売されていました。農協で販売されていたのはFRP棒の直径が約6mmで長さが2.1m、材質はFRPの棒にビニールコーティングされたもの、値段は1本158円(税込)でした。
折れることはないと判断されますが、もう少し太いのはないかと農協で尋ねましたところ、メーカーに電話で問い合わせ、一番大きいのは12.5mmの物があるとのことでした。取り寄せの相談をしましたが、少ない本数での取り寄せは…………。
その後ホームセンターの「パワーコメリ」で太さ8mm、長さが3mの物が売られているのを見つけ購入しました。ということで、今回はこの6mmと8mmのダンポールと13mmの塩ビパイプを組み合わせて試作してみました。まず6mmのダンポールを2本束ねて(※全長2.1mのうち1.3mを片側で使用し、残りの0.7m部分が2本束ね状態になる)作ってみました。その後8mmの物が見つかりましたので、6mmx2のものと8mmの物の湾曲具合を調べてみました。
当然のことながら6mmx2の方が湾曲が少ない感じでした。最後に13mm塩ビパイプと8mmのダンポールを比較をしてみました。これも予想通り13mm塩ビパイプに軍配があがりました。ということで、今回の50MHZの2エレは定尺2mの13mm塩ビパイプを使用し、不足する分をダンポールで受け持たせる方法をとりました。
これについては、その後さらに検討し、13mmの長さ1mの塩ビパイプに長さ3mの8mmダンポールをそのまま貫通させる方法を思いつきました。この工事方法は「50MHZ 3EL ZLスペシャルアンテナ」のコーナーを参照ください。
さらにエレメント支持用の13mm塩ビパイプをブームに固定する方法についても、ここでは手持ちがあったデベマウント(クロスマウント)を使用していますが、これについても、下で紹介しているアマゾンで売っているマスト垂直固定金具(エレメントクランプ)を使用したり、ブームを少し太めのものにし、ブームに直接13mm塩ビパイプを差込む方法等も考えられます。
このブームに直接穴をあける方法は、クランプ類を全く使用しませんので費用も安く全体的にスマートに仕上がります。別項の3エレのコーナーで具体的な作業方法を紹介しています。2ELの場合でもこの方法が一番ベストだと思われます。詳細な組み立て方法は別項の「50MHZ 3ELZLスペシャルアンテナ」のコーナーをご覧ください。
※各写真上をクリックすると拡大して見ることができます。 今回使用したデベマウント
手持ちがあったため使用したアマゾンで販売中のマスト垂直固定金具
これで13mm塩ビパイプを取り付ける13mmの塩ビパイプが通るように
リーマーで穴を大きくする内径25mmのブームパイプに13mmの
塩ビパイプを差込みホットボンドで固定
このように、いろいろと考えを巡らすのも自作の醍醐味でしょうか。最後に現在作業中の3エレをご紹介します。また今回の一連の作業中に安価で使えそうなクランプ類をアマゾンで見つけましたので、これもついでにご紹介しておきます。
アマゾンで販売されているエレメントクランプ ※これも瞬く間に売り切れたようです。1個185円でしたので当然でしょうか。また入荷するか?アマゾンで売られているクロスマウント ※売れだすと値段が上がる。販売価格が877円から1382円に値上がりしています!おすすめ撤回。
完成したアンテナのSWR測定結果
塩ビパイプとダンポールを組み合わせて作ったエレメント支持ユニットと、300Ωのフィーダー線で作ったエレメントを組み合わせて完成したZLスペシャルアンテナに、実際に電波を乗せてSWRを測定しました。測定結果は下記のようになっていました。なお、下記の写真は75Ω:50Ω変換回路を入れた状態での測定結果です。
全般的にSWR値が低く出ています。今回購入したNanoVNAで再測定をしてみたいんですが、残念ながらこのZLスペシャルは既に3エレに改造が済んでいます。3エレのコーナーでSWR計の測定値とNanoVNAの測定値には0.2〜0.3の差が出ています。これを考慮すると上記のSWR値に0.2〜0.3をプラスした数値が正しいSWR値と思われます。
2ELのZL スペシャルは非常に小さく仕上がりますので、移動運用には最適ではないかと思います。しかしながら、別項でご紹介している3EL ZLスペシャルは2ELに比べ約3dBdのゲインアップになります。アンテナを自作する上でこの3dBdのゲインアップは、費用対効果面から考えても使わないのは勿体ない話です。
3EL化のために必要な部材は、8mmダンポール1本と、長さ1mの13mm塩ビパイプ1本、さらに長さ2.49mの300Ωのフィーダー線1本だけです。ブームの長さが若干長く(※全長2m)なりますが、移動運用でも3dBdのゲイン差ははっきりした差が出るはずです。移動運用用として考えた場合、ダンポールの長さ3mが車載する場合、長すぎてそのまま車載できないと思われます。(※これは2ELで作った場合も同じような問題)これについては8mmダンポール長さ3mを半分に切断し、13mm塩ビパイプの両側から差込むように変更すれば問題はないと思います。
そのほか移動運用用として作る場合は、車載できる長さの制限から、エレメント支持パイプ類にいろいろ工夫が必要かもしれません。しかしながら、そこが自作の醍醐味で、オンリーワンの物を是非作りあげ「使用しているアンテナは自作の3EL ZLスペシャルです」とアナウンスするのは気分がいいものです。このようなことから作られるなら是非別項の3ELのZLスペシャルの自作にチャレンジされることをお勧めします。