「 ZLスペシャルアンテナの他バンドへの検討 」により、バラバラに切り刻まれた当初のZLスペシャルアンテナは、300オームのフィーダー線が50MHZ用として辛うじて生き残っています。この50MHZ用エレメントは、後日3〜4ELへの転用を考えていますので、その際の素材として再使用する予定です。一方21MHZ用については、約8年前からエレメントを切ったり継ぎ足したりの繰り返しで、丁度作り替えが必要な時期になっていました。そのようなことから、エレメント支持用の釣り竿を除き、全部作り替えることにしました。
基本的には1998年4月に自作した方法と全く同じ方法で作っています。ただしせっかく作り替えるなら、少しは改良箇所も取り入れてと考え、ほんの少しだけ改良して作りました。ただブーム部分がFRPの棒から塩ビパイプに替わりましたので、この部分の強度不足により若干湾曲する事案が発生しました。
これについては、当初から考えられる現象で、少々原始的ではありますが、ブームを紐で吊り下げるという漫画のような対策を後日取る予定です。移動用なら短時間の使用ですので特に問題は無いと思われます。常時設置でも塩ビパイプのブームの両端をステンレスワイヤーで吊ることにより、台風の襲来時でも壊れるようなことはありませんでした。そのようなことから、そこそこの性能は出ているようですので今後とも使い続けると思います。
アンテナのリニューアル作業風景
以下作業風景を順次写真でご紹介します。300オームのフィーダー線は、買い置きがありましたのでそれを使用しました。バランケースは過去のものは写真のフィルムケースを使用していましたが、最近は色々なサイズのプラステックケースが100均で売られています。その中で最適と思われるサイズの物を購入しました。このプラスティックケースの利用については、以前「 移動用として作ったら非常にFBであった 」とのリポートをいただいたJH6SNG局が使用されているのを見て、真似をさせていただきました。ケースのサイズは8cm(縦)×8cm(横)×4.5cm(深さ)の物を使用しました。今回はプラケースの中にはバランしか入れませんでしたが、ケース内は余裕があるため75:50変換回路も収納可能です。
釣り竿を差し込む塩ビパイプ部分は従来のものは長さ25cmで作っていましたが、今回は2倍の50cmに変更しました。これは釣り竿を約8年間使用し劣化していると考え、強度的に強いと思われる竿の太い部分をできるだけ使うため、そのように変更しました。ちなみにこの長さ50cmの塩ビパイプの半分(25cm)まで釣り竿を差込みますので、結果的に釣り竿を25cm延長したことになります。このため釣り竿の先端の細い部分を25cm切り縮めることができました。
なお、今回作成した物のエレメントデータは「 2エレZLスペシャルアンテナの修理に伴う再設計(最終報告)」で紹介していたデータで作りました。具体的には下記の表のデータです。
給電部分をプラケース内に収納するための加工作業や、劣化したグラスファイバー釣り竿の現状と再塗装の様子等の作業状況を以下写真でご紹介します。
同じ寸法で作ったつもりですが、何らかの原因により共振周波数が下がったようです。前作は約8年前からエレメントを切ったり継ぎ足したりしていますので、そもそもエレメントの長さが正確に合っていたかどうか大いに疑問が残るところです。それとバランに使用しているコアーは、前作はTVアンテナに使用されているメガネコアーを使用し、強制バランタイプで巻いていました。一方、今回はコアーにFT-114-43を使用しましたが、ネットオークションで売られていた1個180円の安物を使用しています。また巻き方も、今回は複雑な結線が必要ない超簡易なソーターバラン(※2芯の電線をコアーに6回巻くだけ)で作りました。この辺が微妙に影響しているかもしれません。なお、75:50オームの変換回路は前作の物を再利用しましたので、これによる影響はないと思われます。
75Ω:50Ω変換回路について
ZLスペシャルアンテナの給電点インピーダンスは約90Ωといわれています。これに50Ωの同軸ケーブルで給電しますとSWRが1.8(90Ω/50Ω=1.8)になります。この状態でもSWRが2.0以下ですので、終段回路保護のためプロテクターが動作し若干パワーがダウンするが何とか使えると思われます。ハイパワー局の場合は少々のパワーダウンは問題ないと思われますが、わたしのようなQRP局ではできるだけSWRを下げて使いたいというのが本音です。SWRをキッチリ1.0にしたい場合はアンテナカプラー等を入れてマッチングをとることになります。
簡易的に固定の比率でインピーダンス変換をさせているのが、下記で紹介している75Ω:50Ω変換回路です。入力インピーダンスを1/1.5(75/50=1.5)に変換するものです。ZLスペシャルアンテナに入れた場合は90Ωのインピーダンスを60Ω(90Ω/1.5=60Ω)に変換することができます。この変換回路を入れない場合は最低SWRが1.8で、入れることによりSWRを1.2(60/50=1.2)にまで下げることができます。
過去にこの変換効果の状態を写真撮影したものがありますので、下記でご紹介します。最初の写真は75Ω(150Ω抵抗X2並列使用)の抵抗をダミーロードにしてインピーダンス測定をすると80Ωと表示されていました。本来は75Ωと表示されるところですが、周波数を21MHZ付近に設定して測定しましたので、高周波特性があまり良くない抵抗のようで80Ωと表示されていました。10MHZ以下の周波数設定で再測定すると、おそらく75Ω表示になったと思われます。ちなみに事前にテスターで確認した時の直流抵抗値は75Ωでした。
次に75Ω:50Ω変換回路を途中に入れてインピーダンスを測定すると50Ωと表示されています。1/1.5変換が1/1.6変換になっているようです。もう少し変換比率が大きいものが欲しいと思っていましたので、願ったり叶ったりといった結果です。
※各写真上をクリックすると拡大写真が見られます。 75Ωの抵抗を負荷にして
インピーダンスを測定中80Ωと表示されている
高周波特性が良くない抵抗かマッチング回路を途中に入れて
インピーダンスを測定中50Ωと表示されている
1/1.6変換されていた
今回のリニューアル作業では75Ω:50Ω変換回路は前述のとおり既設の物を流用しました。過去に作っていた変換回路は、生の両面プリント基盤を切り出して長方形のケースを作り、その中に変換回路を収納し、ケースの両端にメスの同軸ケーブルコネクターを取付て作っていました。ということで、今回は新たに作っていませんが、参考のため50MHZの2EL ZLスペシャルのコーナーで作った75Ω:50Ω変換回路を再度ここでご紹介します。なお本文の中で「多目的基盤」とあるのは私が勝手に名前をつけただけで、ネットオークションで出品されていました。非常に格安で出品されています。今回以外のケースでも色々な使い方ができそうですので、この機会に購入されることをおすすめします。
ついでに申し上げますと、回路の中で使用している10PFと100PFのセラミックコンデンサーは、出力によっては高い電圧がかかります。そのようなことから、使用する出力に応じた耐電圧の物を使用する必要があります。出力50W位までなら耐電圧100Vのコンデンサーで十分です。
多目的基盤販売のヤフオクサイト ※時々このタイプの基盤が出品されています。もし売り切れの場合は、しばらく待つとまた出品されると思います。
ところで、ZLスペシャルアンテナは、300オームフィーダー線を使用します。ご存知のように、このフィーダー線はフォールデット構造(折り返し構造)になっています。このフィダー線を使用したフォールデットダイポールアンテナは共振帯域が広いとで有名でした。そのようなことから、同じ300オームのフィーダー線をエレメントに使用するこのZLスペシャルアンテナも、共振帯域が広いようです。改造前の状態でSWRを測定してみるとバンド内で最大で1.3程度に収まっていました。このまま使用しても特に問題はないようですが、この後ブームを紐で吊る作業をしますので、一緒にエレメントを切り縮める作業をする予定です。
エレメントを切り縮める作業が終了
なぜ共振周波数が下がりすぎたのかは原因不明ですが、とりあえず再度フィーダーを切り縮め共振周波数を上げる検討をしてみました。計算周波数20.998MHZを21.200MHZに変更しますので、エレメントの短縮率=20.998/21.200=0.99になります。この短縮率にRaの6.50mを掛けると6.44m(6.55x0.99=6.435)。またRFの6.64mに短縮率の0.99を掛けると6.57m(6.64x0.99=6.573)になります。ここで本当はRaとRf間の距離S=1.59mも計算して短くすべきですが、構造的に変更ができませんので、Sは1.59mのままにしています。検討結果は以上のようになりました。具体的にはRaを6.50mから6.44mへ、またRfを6.64mから6.57mへ、それぞれ切り縮めることになります。
以上の改造で、計算上の共振周波数は21.178MHZになっています。果たして計算通りになるのか試してみました。結果は下記の表のように共振周波数が21.098MHZになっていました。MMANAの計算結果と実測共振周波数の差がわずか80KHZしか離れておらず、ほぼ希望する改造結果が得られました。
上記のエレメントデータの計算結果を下記でリンクさせました。興味がおありの方は下記ファイルをマウスで右クリックし「名前を付けてリンクを保存」を選択してMAAファイルをダウンロードしてください。ダウンロードしたMAAファイルをMMANAソフトで開くと、当該アンテナの詳細な計算内容を見ることができます。
21MHZ.MAAのダウンロード
改造後アナライザーで共振周波数を測定すると、実測結果は21.098MHZで計算周波数との差は80KHZでした。SWRを測定したところ、なんとバンド内でほとんど反射が見られない素晴らしい結果でした。SWRの測定値は下記の写真でも確認できます。「ほんまかいな!」という結果で私自身も驚いています。もっとも、測定したパワーが3Wですのでその辺も関係していると思います。もしパワーを100Wかけると、もっと反射波が出る可能性があると思います。とはいえ、うまく吸い込んでいるようですので。それなりの性能は出ていると思われます。
あまりのSWR値の低さに一番高い周波数21.445MHZの測定が終わったところで、SWR計を別のメーカーの物に変えてみましたが、結果は同じように広帯域でSWR値は低く納まっていました。また、測定箇所がアンテナ直下ではなく、約15m位の同軸ケーブル介しての測定ですので、同軸ケーブルに反射波が乗り、丁度反射の谷間に入り、見かけ上のSWRが下がっている可能性が考えられます。これの確認として適当な長さの同軸を追加してSWRを再度測定してみました。
結果はSWR値に変化はありませんでした。ということで、やはりうまく吸い込んでいると考えられます。疑っても限りがありませんので、ここは素直にうまく出来上がっていたとします。
この21MHZの2エレZLスペシャルアンテナは、制作途中で色々問題が発生しましたが、やっと満足のいく結果が得られました。改造途中のデータで作られた方には、何度もエレメントデータを変更し大変ご迷惑をおかけしました。なんとか四苦八苦しながら完成させることができました。もっとも、この四苦八苦が自作の醍醐味でもあり、最後に満足のいく結果が得られた時は、苦労した甲斐があったと嬉しくなります。皆さんも自作の醍醐味を味わってみませんか。そういう意味でも、ぜひこのZLスペシャルアンテナの自作に挑戦してみて下さい。
NanoVNA-H4で再測定
50MHZ 3ELを作っている途中で、SWR値があまりにも低く出たため、新しくアンテナネットワークアナライザーNanoVNA-H4を購入し再測定しました。結果はSWR計で測定した測定値より、NanoVNAで測定した方が0.2ほど高くなっていました。この21MHZ ZLスペシャルもあまりにもSWRが低くなっており、気になっていました。そこで今回購入したNanoVNAで再測定をしました。結果は下記の写真のようになっていました。
※各写真上をクリックすると拡大写真が見られます。 19.920MHZと21.030MHZに
ディップ点がありました21.000MHZから100KHZごとに
マーカーを設定しSWR値を表示各マーカーの周波数とSWR値
マーカーは8つまで設定可能雨の日に測定してみました
ディップ点が3つに???
測定ポイントのマーカーは21.000MHZから100KHZごとに7つの設定(8つまで設定可能)をしました。7つのマーカーの周波数とSWR値が画面の上の方に一覧表示されています。マーカー1が21.000MHZ SWR値は1.055になっています。以降100KHZごとに表示させ、マーカー7はバンドエッジの21.450MHZで SWR値は1.387になっていました。やはりSWR計で実測したSWR値に比べ0.2から0.3ほど高くなっていました。たぶんNanoVNAで測定した方が正しいSWR値を表示していると思います。ただマーカー3のディップ点(共振点)の21.030MHZは、珍しくクラニシのアナライザーBR-200で測定したディップ点21.098MHZと大きくズレてはいませんでした。また、フイーダー線が濡れる雨の日にも測定してみました。全体的に共振周波数が下がり、不思議なことにディップ点が1つ増えて3つになっていました。何で???
それにしてもSWR計で測定したものはどうして低くでるのか不思議な現象です。やはり3W位のローパワーで測定していることが原因でしょうか? いずれにしてもバンド内でSWRが1.4以内に納まっていますので、それはそれで良しとします。
話のついでで、この測定に使用したアンテナアナライザーNanoVNA(ナノブイエヌエイ)についてご紹介しておきます。ネットオークションでも時々出品されているようですが、わたしは下記でリンクしているアマゾンで購入しました。
NanoVNA-H4 Amazonの販売サイト ※一時期値段が上がっていましたが現在は少し落ち着いたようです。
この測定器の操作方法は別項の「NanoVNAで遊ぶ」のコーナーで詳しく説明しています。アンテナのSWR測定以外でも、色々な使い方ができますので、興味がおありでしたらご覧ください。
2EL ZLスペシャルの実力はどれほどか
21MHZ用のZLスペシャルは現在3EL化に向けて作業中ですが、例年にない猛暑のため現在は作業を中断中です。従って現在は既設の2EL状態で運用をしています。作業を中断している時間を利用して、現在使用中の「リニューアルした2ELのZLスペシャルアンテナ」の実力(性能は)はどのようなものかを調べてみました。具体的にはコンタクトしている局のうち、直接波(地上波)として聞こえている局の信号を受信しながらアンテナを回転させ、フロント、サイド、バック時のそれぞれのシグナルの強さを観察してみました。アンテナが2ELですのでビームアンテナとしては大したことはないだろうと思っていました。
ところがどうしてどうして、ちゃんとビームアンテナとしてうまく動作をしていました。アンテナをフロントに向けるとSメーターが大きく振れ始め、サイドではシグナルが消えかかることが確認できました。またバックもその昔作ったようなどちらがフロントか分からないようなことはなく、フロントとバックがはっきりと判別できました。
フロントゲインの確認はダイポールアンテナとZLスペシャルを切り替えてシグナルの強さを確認すると、明らかに差が出ていました。特に弱い信号の場合、ZLスペシャルをダイポールに切り替えると全く聞こえなくなり、ZLスペシャルに戻すと音声が判別できる状態でした。また比較的強いシグナルでも、アンテナをダイポール側に切り替えるとノイズ交じりの音声で聞こえ、ZLスペシャルに切り替えるとノイズが消えてクリアーな音声で聞こえるなるなど、はっきりその差が見て取れました。
今回と別の機会で実際のコンタクト時に途中でZLスペシャルとダイポールアンテナを切り替えて、シグナルリポートを送ってもらったことがあります。ほとんどの局がZLスペシャルの方がSリポートが2つほど上という答でした。
ダイポールアンテナは国内向けに指向性(8の字特性)が出るような方向に張っています。またその高さはダイポールアンテナは12mのコン柱の頂部から張っていますので、ZLスペシャル(地上高6m)より高くなっています。ZLスペシャルはそれぞれのシグナルが最大になる位置に回転させ比較しました。オーストラリア(VK)の局は真南に位置しますので、ダイポールアンテナの向きが若干ずれているかもしれません。
ということで観察結果を文章で表現すると以上のようになりますが、これではどの程度かの判断ができなと思い、アンテナを回転させた時のシグナルの変化と、ZLスペシャルとダイポールアンテナを切り替えた時のシグナルの変化をビデオ撮影しました。せっかく撮影しましたので既にYouTubeにアップロードしています。「HIC局の説明は盛りすぎだ」か、はたまた「HIC局の説明の通りだ」と思われるか、百聞は一見に如かず。下記でYouTubeにリンクさせていますので是非ご覧ください。
ZLスペシャルの実力(You Tube)へのリンク
見ていただいての感想はいかがでしょうか。ここで話は急に変わりますが、ローテーターのコントローラーの照明電球が切れ、規格外の電球を取付ています。このためコントロラーの照明が異常に明るく、撮影の際にビデオカメラ側が照度を絞りこみ、動画再生の際にトランシーバーのSメーター部分がかなり見にくかったと思います。ところで、QRP運用ではSWRの高いアンテナの使用はご法度で、ただでさえパワーが少ないのに、それに加えてSWR値が高いと実効パワーがダウンしてしまいます。このようなことから、わたしはSWR値には特に注意してエレメント長さをcm単位で調整して完成させています。さて、わたし自身は2ELでこの程度の特性なら上出来と思っていますが、果たして皆さんの感想はいかがだったでしょうか。